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不思議体験

入月麗奈さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

放課後の片想い
長編 2026/05/13 21:51 963view

 先輩は足元に置いていた鞄を拾い上げ、肩に掛ける。

「じゃあ、あの告白はなかったことにする?」
「……はい」

「そ。わかった。それじゃあ杉崎くん、元気でね。デート、楽しかったよ」

 極々自然に軽くウインクをして先輩は教室を出ていった。

 俺は軽く頭を下げる。

 それは感謝と謝罪のふたつの意味があったけど、先輩との――というか、先輩に憧れていた自分との決別の意味も含まれていた気がする。

「あ、そうそう」

 ひょこっと顔だけ教室に入れて、先輩は俺に忠告? をくれる。

「キミは私のこと天使みたいって思っててくれたけどさ」

 少しだけ間をおいて、いたずらっぽく笑いながら言う。

「天使がいるなら悪魔もいるってことかもしれないね」

「……?」

 俺には先輩の言わんとすることが理解できなかったけれど、自分にも悪魔的な部分があるよということなのかもしれないな。

 良いところがあれば悪いところもある。

 そういう、当たり前のことに気づけるような男になれよっていうエールなのかもしれない。

 先輩が去ってから数秒後、カタッと控えめな音と共に後方のドアが開かれる。

「……終わった、のかな?」

 おずおずと、らしくもない挙動不審さで遠慮がちに教室に入ってくる遊佐に、俺は小さく嘆息しながら「終わったよ」と返す。

「……どうなったの?」
「振られた」
「…………」

「まあ、こんなもんだよ。だって俺だぜ?」

 努めて明るく自虐的なことを言ってみたけれど、なぜか遊佐は泣き出した。

「な……なんで泣くんだよ」
「……わがんない」

 鼻水をボタボタ床に落としながら、制服の袖で目元を拭う遊佐の鼻にティッシュを当てると、思いっきり鼻をかんだせいで、俺の手は鼻水でびしょ濡れになる。

「遊佐。俺ちょっとだけ成長した気がするわ」
「……うん」
「遊佐のおかげ」
「……」
「ありがとな」
「……うん」

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