それから私は石を持ってS崖へ向かった。
今日はとても良く晴れた空の日だった。心地よい風が吹いている。新幹線の窓の外を眺めていると、時間はあっという間に過ぎていった。
新幹線から降り、別の電車へ乗り継いだ。電車の中で私は考えた。…あの女性に何があったのか。なぜ他の人を巻き込むのか。あの女性は、何と言っていたのか。
結局分からないままS崖の最寄駅に着いてしまった。
「…S崖に行くのか。」
お爺さんに話しかけられた。
私「…はい。」
「彼処には行かん方がいい。彼処は…『幸替え』だ。」
私「幸替え…?」
「昔、親に虐待を受けていた少女がいた。毎日物置に閉じ込められてたせいで幸せという物を知らなかったんだ。大人になっても周りから好かれず、ついにはS崖で死んだ。あいつは、死ねば幸せになれると信じて飛び降りた。それから、そこの物を持ち出した物は皆んなS崖に飛び降りる様になった。…彼処はな、幸せを得ることができる場所だ。だが、その代わりに魂を持ってかれるぞ。だから行かん方がいい。」
私「…そうだったんですね。ですが、私は返さなければいけない物があるので。」
「…そうか…取り込まれんように気を付けてな。」
話を終えるとお爺さんは去っていった。それと同時に私はS崖へ向かった。
S崖には誰も居なかった。確か旅行で来た時も、人は居なかったと思う。
私は石を鞄から取り出して、元々あった場所へ返し、その場で手を合わせた。
「ねぇ、」
急に声を掛けられる。その声は聞き覚えのある声だった。
体に嫌な寒気が走る。
声のする方へ顔を向けると、そこには件の女が居た。夢の時と同じように、それでいて夢よりも鮮明に、そこで佇んでいた。
女性が少しずつ振り返る。
「死んだ方が幸せだと、貴方もそう思いませんか?」
女性ははっきりとそう言った。
でも、そうかもしれない。
生きているよりも、死んだ方が幸せかもしれない。
死んだ方が幸せだと、貴方もそう思いませんか。
ー ー ー ー ー
「…だと、貴方もそう思いませんか?」
私の親友——美穂子が亡くなった。約一ヶ月前に行った旅行先で。美穂子は死ぬ直前、私に電話を掛けた。けれど電波が悪いのか良く聞き取れなかった。
でも、これで全て終わった。
正直、美穂子は邪魔だったのだ。



























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