そして、出されたカレーをスプーンでカチャカチャとしていると、ゴロッと大きなビーフの塊が現れた。
それを口に頬張ると、あまりの熱さにびっくりしてしまったが、ビーフは口内ですぐに解けて舌いっぱいに旨味が広がった。
おもむろにご飯をかきこみ、冷たい緑茶を喉に流し込む。
ふう、と一息つくのと同時に父が口を開いた。
「今日は、どうだったんだ。」
「何が。」
「何が、じゃない。面接に行ったんだろう。手応えはあったのか聞いているんだ。」
「まぁ、別に普通だったけど。」
「普通って何だ。受け答えがスムーズにできたとかできなかったとか、色々あるだろう。」
ムッとした僕は、テレビをつけてカレーを二口、三口とかきこむ。
その様子を見た父は、大袈裟に溜息を吐き言葉を続けた。
「優太、お前の人生なんだぞ。もっとしっかりしたらどうなんだ。」
「わかってるよ、だから就活だってしてるんじゃないか。俺だって色々とーーー」
「わかってないからこうやって言うんだ。どうせ、面接じゃ大した受け答えができなかったんだろう。お前の様子を見れば分かるぞ。いいか、しっかりと対策を練った上で臨まんと印象っていうものがーーー」
「もう、勘弁してくれよ!なんだよ帰ってきて早々説教なんてさ、その前に“お帰り”とか、“疲れただろ”とか、言うことあるだろ。こっちだって一生懸命やってるんだよ!」
「甘ったれるな!社会はもっと厳しいんだぞ。大体なんだ、そのしわくちゃなスーツは。だらしのないお前の事だから、ハンガーにかけずに丸めて置きっ放しなんだろう。俺が面接官だったらそんな奴雇わんぞ。そういう所から心構えをだなーーー」
僕は思わず、持っていたスプーンを床に叩きつけると父にありとあらゆる罵詈雑言をぶつけた。
「死んじまえ」「お前なんかいなくなれ」「お前に何がわかるんだ、馬鹿野郎」
そんな汚い言葉を親にぶつける事ですら、今の僕にとっては罪悪感を持たなかったのだ。
優太、と母に激しく右腕を引っ張られた時に、父に掴みかかっていた事に気付いた。
僕はハッとし、手を離すと父が床に倒れ込む。
いつの間に、父はこんなに軽くなってしまったのだろうか。
あんなにがっちりとしていた体格は今や見る影もなく、痩せ細った体は弱々しさすら感じる。
激しく咳き込む父を、母は肩を支えながらゆっくりと立ち上がらせると、今まで見た事のないような表情で僕を睨みつけた。
「優太!あんた、やっちゃいけない事をしたよ!謝りなさい、お父さんに謝りなさい!」
僕は堪らず玄関に走り、無造作に履き捨てられた革靴を履くと、家を飛び出した。
そして、自転車をとにかく漕いだ。
目的地なんて無かったが、とにかく遠くへ行こうとした。
スマホがポケットの中で振動し続ける。
恐らく母であったが、僕は構わずにペダルを漕ぎ続けた。
























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