それから2日間、僕は友人の家に身を寄せていた。
友人には『いい歳して、家出かよ』なんて笑われたが、確かにその通りである。
今の状況に僕自身も馬鹿らしくなり、帰宅する決意をした3日目の夜の事だった。
あまりの寝苦しさに目が覚めた僕は、明らかな異変を感じていた。
体が硬直して動かないのだ。
だが不思議と目は冴えて、感覚が研ぎ澄まされている気がする。
ーーーこれが所謂、金縛りという現象なんだろう。
そう直感的に考えていた次の瞬間、玄関の方からゴソゴソと、奇妙な物音が聞こえる。
小さなワンルームなので、玄関は部屋と直結である。
音の正体を確かめる為、首だけ起き上がらせ目を凝らすと、白いモヤのようなものが玄関を覆っていた。
“それ”が段々と人のような姿へ形成されていく事に気づくのに、時間はかからなかった。
“それ”は、しばらく玄関へ留まっていたが、僕の方へ向き直り、ゆっくり、ゆっくりと近付いてくる。
友人は寝息をたて熟睡しており、起きる気配もない。
僕はというと、情けなさそうに口をパクパクとさせるだけであった。
一歩、また一歩と、ゆっくりと確実に僕の方へと迫ってくる。
ーーーもうだめだ。
次の日、友人の呼ぶ声で僕は目を覚ました。
「優太、おい、優太。電話、ずっと鳴ってるぞ。起きろって。」
僕はむくりと起き上がり、辺りをキョロキョロと見渡す。
ーーー夢だったのか。
ホッと胸を撫で下ろすと、いつまでも鳴り響くスマートフォンを確認する。
母からの着信だった。
ずっと無視をしていたが、今度こそ電話を取って、“もう帰ろうと思う、ごめん”と言おう、そう考えながら液晶をスライドさせ、スマートフォンを耳に当てると、母から思いもよらぬ言葉が出た。
「あんた、何してるの!何で、何で電話も何も出ないの。あんたねぇ、あのねぇ、お父さん、お父さんが、死んじゃったよ。優太、もう、母さんどうしたらいいのか、わからないよ。」
涙声でつっかえながら話す母の言葉の意味を理解すると、僕は頭の中が真っ白になるのと同時に、何かが音を立てて崩れ落ちるのを確かに感じた。
父が急逝したのは、昨日深夜らしい。
死因はすい臓がんで、既に末期状態であった事を母は静かに僕に告げた。
いつ危篤状態になっても、おかしくない病状だったようだ。
























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