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不思議体験

志那羽岩子さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

白い蓋の標本室
短編 2026/02/21 20:59 112view

廊下で重い扉が開く音がした。

「施錠確認です」

若い声だった。

守衛が続ける。

「先生、今夜、四階に入れるのは鍵を持っている研究室だけです。あなたの研究室と、もう一つ」

「どこですか」

「三十年前に閉鎖された、生体標本室です」

その瞬間、研究室の棚に目が止まった。

白い蓋のケースがあった。

見覚えはない。だが、そこにあることに違和感がない。最初からあったように思える。

ノックが止まった。

私は近づいた。蓋に触れる。温度は室温と同じだ。だが、匂いはここから出ている。

蓋を持ち上げる。

中身は見ない。

ただ、確かに何かが沈んでいる気配だけがあった。

そのとき、廊下で声が上がった。

「……先生? 四階に誰もいませんよ。水も止まってます。封鎖は解除されてません」

守衛の声が受話器の奥で揺れる。

「先生、今どこにいますか」

私は研究室にいる。

そのはずだった。

窓の外を見た。中庭が見える。だが配置が違う。樹木の位置が反転している。渡り廊下が一本、多い。

匂いが強くなる。

棚のケースが、いつの間にか二つになっていた。

白い蓋が並んでいる。

ノックが、今度は内側から鳴った。

規則正しく、一定の間隔で。

私は返事をしない。

返事をしなければ、止むことは知っている。

だが止まらない。

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