僕の家のリビングには、はめ殺しの窓がある。
幅30センチほどの窓で、テレビ台と壁の間に天井から床へと伸びている。
そこに顔が覗くと言い出したのは、最初祖母だった。
気のせいだと家族で何度も説明をしたが、結局祖母は、僕たちの知らぬ顔を恐れて部屋に引き篭もりがちとなった。
それから、1年ほどして認知症の疑いが出てきて、あれやあれよという間に老人ホーム送りとなった。
次に、顔が覗いていると言い出したのは妹であった。休みの日、リビングからぎゃっと悲鳴がしたので行ってみると、妹がはめ殺しの窓を見ながら腰を抜かしていた。
「今、確かにあの窓から半分だけ顔出してこっち見てる人がいた」
父と僕の2人で裏口からはめ殺しの窓が向いている裏庭へと出てみたが、人がいた様子はない。
疲れてるんだとなだめたが、それからも妹は何度か顔を見ていたようであった。
妹はそれから程なくして、彼氏と同棲するとかで街の方へと引っ越していった。
「あの顔を見たら、この家から出て行かなきゃいけないのだろうか」
父がぼんやりとそう呟いた。父は長年の愛煙で肺を患っている。
あの顔を父は見たんだろうか。僕はまだ聞くことができずにいる。
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