夏休みに家族旅行でどこかの砂浜に遊びに行った。
ブルーシートを広げ家族と賑やかにお弁当を食べていた。
海岸線を眺めていたら、ちょっと考えられないくらいに大きな大きな蜃気楼が出てきた。
蜃気楼を見ていたらまるで催眠術にかかったように睡魔に襲われてしまい、そのまま昏睡してしまった。
夢の中で僕は当時好きだった同級生の女の子と一緒に家族と海水浴をしていた。
女の子が言った。
「私もこういう家族が欲しいな。」
そしてこう続けた。
「ちょうだい。」
「あなたのお父さんとお母さんとお爺さんとお婆さんを私にちょうだい。
みんな私にちょうだい。」
そう言われて僕はなぜか「うん」と言ってしまったのだ。
その瞬間、目覚めた。
僕は眠っていた。
実は僕には血の繋がった家族が一人も居ない。
この奇妙な体験を思い出す度「うん」ともしも言わなければ天涯孤独になることもなかったのかなと葛藤する時もある。
あの日の家族旅行で僕は施設の職員さんと家族旅行に行ったのだ。
二人だけにしてはやけに広いビニールシートと三人前多く届いた弁当が印象的だった。
最初はたった一つしか無かった蜃気楼があの忌まわしい夢から目覚めた時には五つの巨大な蜃気楼になって踊り狂っていた光景を今も忘れられない。
あの砂浜の場所がどうしても思い出せない。
僕が当時住んでいた地域は蜃気楼が見えるような海岸なんてどこにもなかった筈なんだ。
同級生の女の子は夏休み明けにどこかに転校していた。
今もあの砂浜を探している。

























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