洗剤とも、線香とも違う。
湿った布と、金属と、ほんの少しの甘さ。
俺は、家に入るのをやめた。
休憩を断り、食事も断った。
それでも車は止まる。
ある晩、ついに確信した。
バックミラーに、あのメダルが映った。
聖クリストファー。
最初の男の車と、同じ位置に、同じ角度で下がっていた。
運転していたのは、別人だった。
だが、笑い方が似ていた。
「よく旅されてますね」
そう言われた瞬間、背中が冷えた。
“続けている”と思われている。
俺は、まだ旅人として数えられている。
降ろしてもらい、その夜は野宿した。
火を焚き、眠らずに朝を待った。
夢を見た。
白い家が、いくつも並んでいる。
山の斜面に、等間隔で。
どの家も同じ形で、同じ白さで、同じ静けさだった。
それぞれの玄関から、人が出てくる。
全員、色あせたミッキーマウスのTシャツを着ている。
年齢も、性別も違う。
だが、笑顔だけが同じだった。
彼らは道に立ち、親指を立てる。
車が来る。
止まる。
乗せる。
旅人は減らない。
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