私は東京都に住む主婦だ。
その日は友人(A)と食事に行っていた。私たちは学生時代共に「オカ研」のメンバーで、よく地元の心霊スポットに行って遊んでいた。ただ、時間が過ぎると、そんなものバカバカしいと思うばかりで、もうあの頃の心霊への情熱は失ってしまった。
だが、Aは違った。話を聞くと、彼女はこの10年の間に、オカルト雑誌のライターに就職したらしい。
私「雑誌のライターね…すごいね。ウチなんて、活字読むだけで目が痛いしさ。オカルトなんてったって、ウチはもう冷めちゃった。」
A「まあね、でもオカルトはいいぞ〜。厳しい世界だけど。もう誰も雑誌買わん時代だからね。」
私「まあ、たしかに。ウチみたいのが多いからな」
A「そそ。あ、そうだ!せっかくだからさ、この店の近くの神社寄ってかない?この仕事就いてから知ったんだけどさ、そこ実は出るらしいんだよ。」
私「へー。まあせっかくだし、どーせなら行っちゃう?オカ研で集まれたんだしね。」
A「いいじゃーん。雑誌のネタゲット〜」
心霊スポットと言っても、高校3年間を全てオカ研に注いだ私が知らないスポットなんて、たかが知れてる。しかも、地元の、そこそこ大きな神社。経験則的に、絶対ビビりの後付けだろ、としか思えなかった。有名な心霊スポットですら、出るとこ出ないとこがある。Aによると相性とかもあるらしいけどね。
ーー
店を出ると、もうすっかり夜だった。時刻は9時半だ。ビル風のせいで帽子が飛ばされそうになりながらも、私達は例の神社へ向かった。
そこは駅前で、異様な雰囲気を放つ神社だった。祭りの時とかはいつも人が集まり、毎日そこそこ人のいる活気のある神社だ。
しかしその夜は、それが嘘のように静かだった。時間が時間なので、人はいなかった。勿論、霊も。虫の鳴き声が響くだけの退屈な空間。
私たちは学生時代を思い出し、境内を探検していた。灯篭、鳥居、全て昔と変わらなかった。
それでも探検していると、ある小さな祠を見つけた。知らない祠だ。そして、その祠の地蔵の前に、ある封筒が落ちていた。ピンク色で小さく、中には手紙が入っているようだった。興味津々で手紙の内容を覗いた。
「ふが、なくてみてる。ふふふふふ。」
その筆跡は封筒の見た目通り、小学生の女子、という感じだった。だがそれを見た瞬間、境内の空気がドッと重くなった。鈴虫は泣きやみ、なんだか夜の闇がより一層強くなった気がした。
「A!?どこ!?」
気付けばAは消えていた。地蔵から鋭い視線が向けられたような気がしたが、そんなわけなかった。本殿から「ふふふふふ」というような笑い声が聞こえたような気がしたが、それも勘違いだった。
なんだか頭痛がしてきた。ので、走って逃げた。すると、神社の鳥居の下にAが立っているのを見た。
A「どうしたの?」
私「もうここに居たくない!」
A「なんで?」
私「いいから!今日は楽しかった!」
A「いやいや、心配だから、マンションの前まで一緒に帰るよ。心スポだから、もしかしたら不良とかに目付けられたのかもしれないし!」
…ありがてえ…!やっぱ持つべきものは友なんだ。
神社を出ても、あの時に感じた頭痛のような恐怖は離れなかった。だが、Aが一緒に帰ってくれたおかげで、だいぶ安心感があった。
夜の住宅街、夜の公園。全てが静まるように闇に染っていく。それは普段見慣れた光景のはずが、彼女と一緒だと、なんだか非日常に思えた。

























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