「今大丈夫か?」
「うん、いいけど、どうしたの?」
「いや、ちょっと聞きたいことがあってな。
憶えてるかなあ、、二年くらい前にお前と一緒にライブに来てた暗い感じの女」
「もしかして、里美のこと?」
「そうそうそう!そんな感じの名前だった」
「確かりゅうくん、しばらく彼女にストーカーされてたよね。
あの子もともとメンヘラ気質で、あんまり友達とかもいなかったんだよね」
「そうなんだよ。
初めのうちは俺の全てのライブに来てくれてさ、ファンになってくれたんだラッキーくらいにしか思ってなかったんだけどさ。
徐々にエスカレートしていったんだ。
楽屋のロッカーの陰に隠れていたり、
アパートの前で待ち伏せしたりしていた。
自宅に来るのは迷惑だからって言ってからは、
今度は集合ポストに手紙を入れるようになったんだ。
初めのうちは単なるファンレターだった。
でも内容が少しずつ意味不明になってきたんだよな。
『あなたとわたしは来世で一緒になる運命』とかね。
やがて黒髪の入った封筒をポストに入れたり、
最後はヤバいものを入れた封筒を深夜ドアポストに入れてきたのには参ったな」
「ヤバいもの?
何それ?」
「耳」
「え!」
「ああ、自分の耳を封筒に入れてたんだ。
『ライブ以外でも、あなたの声を聴きたいから、あなたのそばに置いてやってください』なんて訳の分からないメモと一緒にな。
それでとうとう俺切れて、彼女にかなり酷いことを言って二度と来るなって言ってやったんだ。
そしたら、それからは姿を見せなくなったんだけど」
「で、、、里美がどうしたの?」
「いや実は今日スマホの写真フォルダを整理してたら、おかしな女の写真があったんだ。
どこかの岸辺に立ってるんだけど、よく見ると右耳がないんだよ」
























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