Siriはずっと繰り返し喋っていた。
布団の中から。
「すみません、もう一度お願いします。」
「すみません、それは人の音声ですか?」
「ごめんなさい。…(砂嵐のような音)」
子供が起きてもこれでは怖がる、そう父親としての直感が言っていた。だから、子供からの視線を感じながらも電源を落としにかかった。だが、落ちなかった。むしろ、画面の明るさが、私を嘲笑うように明るくなった。キリギリスの鳴き声のようなノイズが混じり、もう聞き取れる段階にはなかった。
「ごめんなさ(砂嵐)
すみません、電波が悪(通知音)
(砂嵐)、もう一度お願いしまーー
あ、あ、あ、、(砂嵐)
ごめんなさい。(通知音)
すみません、よくわかーー(ピーという音)」
…。
もうやけになって、
とびきり大きな声をあげて起こした。
流石に子供は起きた。立ったまま、半泣きの顔で。
「パパ。怖いよ」
ふと音声はやんだ。それに引っ張られるように、私も我に帰った。悪い夢を見ていたような気分だ。というより、そうであってほしかった。
「ごめん!ごめんよ…」
そのあとは、一緒に抱きしめて寝た。
申し訳ない気分で、日が上るまで離さなかった。
今度は暴れなかった。
…そしてその二週間後、嫁は亡くなった。
寝込んでいた嫁の熱は引かず、病死したらしい。
それっきり子供の夢遊病は収まったが、何か因果があるように思えてならない。
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