店主の許可を得て、そのアルバムを取り出した。
表紙には『黒澤第一小学校 卒業記念』とある。
俺の世代の、三年前のものらしい。
ページをめくる。
笑顔の子どもたち。集合写真。
しかし、次のページで、息が止まった。
列の端にいるはずの生徒の顔が、
白く塗りつぶされていた。
丁寧に消されている。
写真の他の部分は傷んでいないのに、
その顔だけが、白い円で覆われていた。
名簿を見れば、“小山”の文字がある。
俺の隣の席だった、小山だ。
「この写真……どうして」
震える声で問うと、店主は静かに答えた。
「最初から、こうでしたよ。
この学校の写真は、どれも“ひとり”いないんです」
その瞬間、背筋を氷のようなものが這い上がった。
俺は無言のままアルバムを閉じた。
「ところで、お客様……お名前を伺っても?」
店主の声に顔を上げた。
反射的に名乗る。
「佐原です。佐原圭一」
店主の表情が、一瞬止まった。
まるで何かを思い出したように、目を細めた。
「……奇妙だな」
「何がです?」
「その名前、以前にも聞いたことがある気がして。
たしか、同じ郷土誌を買いに来た方が——」
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