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不思議体験

霙さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

ひいじいちゃんの椅子
短編 2025/11/19 17:58 1,310view
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小学校低学年の頃、母方のひいじいちゃんが亡くなりました。
正直、実感も悲しみもありませんでした。
私が物心つく頃にはもう認知症で、とにかく怒りっぽくて、すぐに暴れだすような人で……ほとんど接点がなかったからです。

葬式は母の実家で行われました。
母たちは宴会の準備でバタバタしていて、大人たちはお酒。
同年代の子どももおらず、私はすっかり暇を持て余していました。

台所にいれば何か手伝えと言われそうだし、酔っぱらったおじちゃん達にも絡まれたくない。
「ちょっとサボっちゃえ」と思って、家の中を探検し始めました。

すると、廊下の奥にガラス障子の小さな部屋を見つけました。
半分物置のような雑然とした部屋。その中央に、ふかふかのロッキングチェアがあったんです。

少し埃っぽかったけれど、私はそこで大好きだったゲームボーイアドバンスを始めました。
まったく眠くなかったはずなのに、ふわっと意識が落ちていって……。

寝落ちする直前、誰かに話しかけられたような気がしました。
でも眠気に勝てなくて、私はそのまま眠ってしまいました。

目を覚ましたのは、母に優しく肩を揺らされたときでした。
サボってゲームしてたのがバレて怒られると思いきや、母は少し呆れた顔をしているだけで、特に叱られませんでした。

宴会場に行くと、親戚たちが次々と声をかけます。

「お、あの部屋で寝てたんだって?」
「椅子、気持ちよかったでしょ」

「いい夢見れたか?」

最初は皮肉かと思いましたが、みんな妙に優しい。
祖母なんか少し涙ぐんでいて、子どもながらに不思議で仕方ありませんでした。

その日はご馳走を食べて、“サボり事件”はそれで終わりました。

時が経ち、母の実家に行ったとき。
ふとこの出来事を思い出し、母に聞いてみたんです。

あの小さな部屋は、亡くなったひいじいちゃんの書斎で、あのロッキングチェアはひいじいちゃんの愛用の椅子だった、と。

母たちは私がサボっていることなどとっくに気づいていて、「静かにしてるならいいか」としばらく放っておいたそうです。
台所の仕事が一段落して迎えに行くと、私はロッキングチェアで気持ちよさそうに眠っていた――その時。

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