友人とショッピングモールへ買い物に行った時の話です。
当時、友人は免許を取ったばかりで、運転にもようやく慣れてきた頃でした。
休日で駐車場はどこも埋まっていて、入口近くに運良く一つだけ空きがあるのを見つけました。
友人はバックでそこに入れようとして、ミラーとバックモニターを交互に確認しながらゆっくり下がっていきました。
私は助手席でサイドミラーをぼんやり見ていて、
「ああ、このくらいの距離感なら大丈夫だな」
なんて思っていたんですが——
急に、ぐっと体が前に押し出されました。
友人が急ブレーキを踏んだんです。
バックモニターを見つめたまま、友人は固まっていました。
「……ごめん」
そう言うと、車を停めて外に出てしまいました。
私も慌てて降りてみると、友人は自分の車の下と、後ろに停まっている黒い軽自動車の下を交互に覗き込んでいました。
「どうしたの?」
と聞いても、友人は小さく首を振って、
「……見間違いだった」
とだけ言います。
その言い方が、ぜんぜん見間違った感じじゃなくて。
むしろ、“見えてはいけないものを見た”ような顔でした。
でも、その時私の目は、別のところに向いていました。
友人の車の後ろに駐車していた、黒い軽自動車。
ダッシュボードいっぱいに、なにかが積まれていたんです。
近づいていくと、全部御守りでした。
交通安全、家内安全、厄除け、神社の名前の違う札——
種類も大きさも全部バラバラなのに、ぎっしり敷き詰められていて。
バックミラーにも十個以上こんもりとぶらさがっていました。
「……この車、すごいね」
小声でつぶやくと、友人が強張った声で言いました。
「ごめん。やっぱり別の場所に停め直していい?」






















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