管理人の声は厳しく、笑いはなかった。
俺たちは黙って頷くしかなかった。胸の中には、吐き気と怒りとどうしようもない恐怖がぐちゃぐちゃに渦巻いていた。
管理人は簡単な処置をしてくれ、着替えや食べ物を分け与えてくれた。俺たち二人を車に乗せると、朝靄の残る道をゆっくりと下りて行った。
その後、数年が経った。
俺と亮介は、あの日以来「肉」をまともに口にできなくなった。
亮介は次第に心を蝕まれ、外に出ることを嫌がるようになり、やがて引きこもってしまった。電話をかけても応答はまばらで、笑っていたあの顔は見る影もない。
俺はというと、精神科に通い、薬とカウンセリングで何とか日常を取り戻した。夜道にまだびくつくこともあるし、ふとした瞬間にあの赤い床や斧の音がフラッシュバックすることもある。だが、以前よりは落ち着いてきた自分がいる。
そして俺は、あの日以来二度と肝試しの真似などしないと心に誓った。あの山にも、二度と足を踏み入れてはいない。
正直言って、あの出来事を思い出すたびに胃が絞られる。忘れたい。けれど忘れられない。もし今もあの山に、あの木こりが現れるのなら――誰も犠牲にならないことを、ただ祈るだけだ。
どうか、あの日の俺たちのように、肝試しという馬鹿な真似をして、取り返しのつかない代償を支払う者が出ませんように。
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