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心霊

紫の野菜さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

スポーツカーの主
短編 2025/10/22 00:13 2,126view
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翌朝、昨晩の出来事を伝えると、兄は
「はあ?お前夢でも見てたんじゃねえの?」
と笑った。
「いやマジだって!エンジンの音もはっきり聞いたし!」
「他所の家の車の音と勘違いしただけだろ」
そう言われてしまうと、だんだん自分の見たものに自信が持てなくなってきた。
確かに昨日の夜はヘトヘトに疲れていた。
リアルな夢を見ていたとしてもおかしくないのだ。
(持ち主が事故で死んだなんて聞いたから変な想像しちゃったのかもな)
俺はそれ以上兄にその話をするのはやめた。

その日の深夜、ブォンブォンという車の音で目が覚めた。
身体を起こし、窓から外を見る。

まただ。スポーツカーの運転席に、人がいる。
(やっぱ見間違いじゃねーじゃん!)
俺は兄の部屋へ行くと、気持ち良さそうに寝ている兄の頬を引っ叩いて起こした。
「あ?なんだよテメー」
「いいから俺の部屋に来い!」

兄と一緒に窓から外を見る。
スポーツカーの運転席に人がいるのを確認すると、兄は顔色を変えた。
「あれ……泥棒じゃないか?」
「え?」
兄は俺の部屋の隅に立て掛けてあった木刀を掴むと「お前も来い!」と言って部屋を飛び出した。

兄と一緒に庭に出る。
車の運転席にはまだ人がいた。

……が、様子がおかしい。
おそらく着ているのは白いシャツなのだろうが、そのシャツが真っ赤に染まっている。
顔もどこか虚で、あちこちから血が滴っている。明らかに生きている人間ではない。
その時、兄の手から木刀が落ちる音がした。
「ゆ、雄太……」
「え?」
兄はふらふらの足取りで車に近づいた。
「雄太、お前……成仏できてないのか……」
兄が近づくと、車に乗っている血塗れの青年が顔を上げた。
「雄太、気づいてるか?お前もう死んでるんだよ。死んでるんだよ……」
兄の目からボロボロと涙が溢れる。
そんな兄の姿を見たのは初めてだった。

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