その途中、何やら話し声が聞こえました。
恐る恐る声の方をみると、河川敷に彼と担任がいました。
その傍には朽ちたテントの残骸があります。
担任は彼に何かしら申し渡すと、森へ向かって歩きました。
残された彼は呆然としています。
……しかし奇妙なことに、担任は森に身を入れた途端、木陰から彼の様子を伺っていました。
暫く時が経ち、担任は敗残兵が川を眺めているのを確認すると、しのびあしで彼に近づきます。
担任の左手には先程の藁人形が握られていました。
右手には、どこにしまっていたのか、大きな鉈が握られています。
数秒後、鉈は横に振られ、彼の首は宙に舞いまして、川に落ちて、どんぶらこっこと流れて行きました。
担任は横たわった胴体の切断面に、先の藁人形を差込み呪文を唱えます。
すると死体は、むくりと上体を起こしました。
さらには、そこ在るはずの無い頭が、首元から生えていました。
ですが、その顔は元の彼ではなく、六十は過ぎているであろう老人の顔でした。
ソレは口をパクパクと開いて
「セ ン セ イ オ レ ドウシ タラ……」
異形の顔を観察した担任は怪訝な様子です
「おかしいな。おまえどこの霊を引っ張ったんだ?
まあいいや、この河原で過ごしてろ。今は二つの人格が混在しているようだが、時期に落ち着くさ。
いいか、三日したらバスに乗ることになる。
そしてバスを降りたら、どこにも寄らずに歩いてまたこの河原に来るんだ。そして川に飛び込め」
そう言うと、担任は宿泊地の方角へと去って行きます。
私は悪夢でしかない光景に恐怖し立ちすくみましたが、この後どうするかを思案せざるを得ません。
思い返してみれば、バスが山中に入ってから駐車場に至るまでかなりの時間でした。歩いて人里へ下りるのは遭難の危険性が高いでしょう。
私が廃墟にいないことを、あの担任に気づかれたらどうなるでしょうか。追いつかれ殺されるかもしれない。
……自分も他の生徒にまじっておかしくなったふりをするしかないのではないか。
そう決断した私は廃墟に戻り、狂った同級生達の間で同じように狂ったふりをしたのでした。
しかし夜になると
教師達は酒を飲みながら、下卑た話をはじめました。
次第に、女子生徒の誰々は可愛いとか、気持ちの悪い話題になっていきます。その話題の中には私の名前も入ってました。

























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