これは私の高校時代にあった悪夢のような話です。
私の学校では毎年林間学校になるとG県に行くことになっており、私の年も例年通りの旅程なはずでした。
ところがおかしなことにバスは高速を別方向に走り、やがてG県ではない、他県の出口に降りました。
するとバスの中で強面の担任教師が
「宿泊予定だったホテルが燃えた。だから今日は別の場所に泊まることになったぞ」
携帯電話も事前に取り上げられていましたから、親に連絡を取ることもできません。
私達は担任の言う事を聞くしかなかったのです。
それからバスは県道から細い脇道に入り、薄暗く荒れた山道を登りました。
どれくらい走ったでしょうか。やがてバスは、森に囲まれ荒廃した駐車場に停まりました。
バスを降りると、私達は出席番号順に並ばされます。
すると担任は、五寸釘が打たれた不気味な藁人形を順番に回すように指示しました。
意味不明ですが、藁人形は順々に同級生の手に渡っていきます。
『高校敗残兵』とあだ名されるクラスメートに藁人形が回ったとき、異変が起きました。
藁人形から黒い影が現れて彼の身体に纏わりついたのです。
途端に彼は崩れ落ちました。
しかし周囲のクラスメートには影の方は見えないようで、加齢による膝関節の反抗期だろうと片付けられました。
そして担任の指示のもと藁人形は彼から取り上げられ、淡々とまた回されていきます。
私は恐ろしくなり、他のクラスの人間に紛れて自分の番はやり過ごしました。
その後、彼と担任を残して、私達は他の教師に連れられて宿泊地にむかいました。
しかしどうやら宿泊地への道が舗装されたのはかなり昔のようで、路面は荒れているし落石もところどころ散っています。
みんな心配そうな顔をして歩いています。
されどそのうち宿泊地に着きました。
でも、廃墟でした。
道を間違えたのでしょうか?
教師達の様子を伺います。
無表情で、冷酷な顔をしています。
さっきまで一緒に歩いてきた同級生達といえば、目の焦点が合っていません。
そのまま同級生達は無言のまま廃墟の中に入っていきます。
そして不気味にケタケタと笑い出すのです。教師達は眺めているだけです。
私は恐ろしくなり廃墟に入らず藪の中に隠れて、そのままバスの方へ逃げ出しました。

























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