身の毛のよだつ身の危険を感じ、荷物から懐中電灯を取り出すと、私は夜の森に逃げこみました。
そして音を立てないように少しずつ駐車場の方へ進みます。決して廃墟の方へライトを向けないよう気をつけながら……
ところが
「オ イ ミ ロ」
「ひ!」
不意に声をかけられ、小さく悲鳴が漏れました。
ライトを向けると、彼だったモノが目から血を流して、ニタニタ笑っていました、
叫びそうになりましたが、必死に声を押し殺します。
その顔は、昼に見たときよりも元々の彼の顔に近づいているように思います。
「やあ……君か……どうしたんだい……」
私は、なんとか気持ちを奮い立たせて話を合わせました。
どうやらこの異形は自分を彼だと思い込んでいるようです。
異形は旅館に行って酒が欲しいとのたまってます。
私は絶望しながらも廃墟へと戻らざるを得なくなりました。
貴様なんぞ酒飲んでセルフ除霊されてしまえ。
……途中、キャンパー風の男の首吊り死体がありました。
心臓が止まるかと思いましたが、それでもなお異形を刺激しないよう、知らんぷりして歩を進めます。
何なんだちくしょう。
だが、あの首吊り死体の顔には見覚えが……そうか、頭が生えた直後の顔だ。
キャンパーの地縛霊が呪術に引き寄せられたというのでしょうか。
途中異形が、何か話しかけてきましたが無視しました。あとミロって誰だよちくしょう。
やがて忌まわしのクソ廃墟に到着しました。
そして教師達に悟られぬよう廃墟の中へ潜り込み、私は他の同級生達と同じように狂ったふりをするのでした。死霊の盆踊りかよちくしょう。
教師達の注目が異形に集中したのが幸いし、私が戻ってきた事に気づいた教師はいないようでした。
しばらくして担任は、再び異形を外に連れだしました。
……その後、私はもう外に出る気力もなく、林間学校の期間が終わるまでずっと狂ったふりをしていました。本当に気が狂いそうでした。
やがて地獄のような日々が終わり、教師達は生徒達をバスに連れ込みました。
帰りのバスに異形は乗っていました。
確かに見た目は、元の彼です。
ですが私はもうソレを直視することはできませんでした。


























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