Aは、いたか?
昼に食べたものは、今朝の記憶と一致しない。
指を数えてみると、たしかに五本だが……妙な違和感が残った。
現実の輪郭が、滲んでいく。
そして昨日。
日記には、たった一文が追加されていた。
明日、彼は“読者”に話しかけ始める。
“読者”?
最初は意味がわからなかった。
けれど今、わかる。
これを書いている俺は、もはや日記の“持ち主”ではない。
“記録する何か”に手を借りられているだけだ。
だが、俺の意識はまだ残っている。
残っているうちに、どうしても、あなたに伝えなければならない。
この記録は、もう俺のものじゃない。
だが、“君”にしか気づけない兆候がある。
どうか確認してほしい。
君の机に、見覚えのない“日記”や“手帳”が置かれていないか?
最近、決まって同じ時間に“視線”を感じることはないか?
ふとしたとき、自分の記憶に“曖昧な空白”や“ズレ”を感じないか?
自分の名前を、他人に先に呼ばれたような妙な既視感を覚えないか?
もし、ひとつでも心当たりがあれば、もう“始まっている”。
君は、俺の続きを読んだ。
それは、“記録を引き継いだ”ということだ。
これから、君の手が動く限り、“あれ”は記録を続ける。
止めてはいけない。
止めた瞬間、記録の主が──君に変わる。
あれは、“空白”の中に入ってくる。
言葉の途切れた隙間に、名もなく潜む。
もうすでに、君の中に──
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 3票



























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。