早速家電量販店で購入し、家族が寝静まった深夜にリビングの窓際に設置する。ここからならキッチンまで映り込むし、広範囲の映像を拾える。
翌朝、妻が起きてから寝室にも設置。
これで、もしも我が家での不貞行為があれば、証拠を突きつけられるはずだ。
もし仮にそのような行為がなかったとしても、間男の顔を知ることができるので、家に連れ込んだ時点で、俺の目的は叶う。
そして後日、録画データを確認した俺は、嗚咽混じりに涙を流すことになる。
当直明けの水曜日だった。
妻は娘を幼稚園に送った後、友人と食事をしに出かけるとのことで、帰宅した俺は家に一人だった。
お誂え向きにも自由な時間を手に入れた俺は、早速映像を観る。
誰もいない時間は早送りしないといけないものだと思い込んでいたのだけれど、どうやら人感センサーとやらが搭載されているものらしく、人がいる時のみ録画されるようだ。
これなら何十時間も観る必要はない。
昨夜は救急対応に奔走させられて、とにかく体力の消耗が半端ではない。
すぐにでもベッドへ突っ伏してしまいたいのをなんとか堪え、PCの電源を入れる。
最初に映し出されたのは、キッチンで俺の弁当を作る妻の姿だった。
妻はいつも卵焼きを作ってくれる。
しかし、彼女は卵アレルギーだ。
卵を溶いてるときや割ったときなど、もしも皮膚に触れてしまえば発赤ができ、以前は掻き壊してしまい、かなり出血してしまったこともある。
だから俺は卵料理は作らなくていいと何度も伝えた。でも妻は――彼女は、いつもいつも、俺の弁当に卵焼きを入れてくれる。
綺麗に形が整えられた卵焼きを、毎日、毎日。
理由はひとつ。彼女が卵アレルギーだと知る前、出会ったばかりの頃に、「卵焼きが好きなんだ」と言ってしまったからである。
特に、弁当には卵焼きがないとなんとなく寂しさを感じるとも添えた気がする。
そのせいで――映像の中の妻は、腕を掻きながら、一生懸命卵を溶いている。
……俺のせいで。
……俺のために。
途端、俺の頬を水滴が伝う。
なぜ俺は、こんなにも俺に尽くしてくれている女性を疑っていたんだろう。
なぜ俺は、彼女を信用しなかったのだろう。
俺は自分のことばかり考えていたんじゃないだろうか。
卵焼きが入っているのを見ても、きっとアレルギー反応も落ち着いてきたんだろうなとか暢気に考えていたんじゃないか。
そんなわけがない。彼女の腕はいつも傷ついていたはずだ。
俺は彼女の何を見ていたんだ。
























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