人の言葉をまねて話す鳥と言えば、インコにオウムに九官鳥。
九官鳥は今はあんまり見かけないけど、ワタシがまだ幼かった頃に
家で飼っていたことがありました。
「きゅうちゃん、きゅうちゃん」と話しかけると
「キューチャン、キューチャン」と返します。
でもそれ以外の時は
「アウアウアウ」とか、
「キュイーーーーー」と甲高く鳴いたりするばかりです。
やはり、同じ言葉を何度も何度も聴かせてあげないと、言葉は覚えないものなのでしょう。
せっかく買った九官鳥なのに、父も母もしばらくしたら見向きもしなくなりました。
声が大きくうるさいし、鯉のエサみたいな大きな緑色のエサは、一度お湯でふやかして柔らかくしないといけなくて面倒くさいし、またそのせいかフンも緑色で臭く量も多く、すぐにケージの中は汚れました。そんな九官鳥に飽きていたのです。
ワタシだけがせっせと九官鳥の世話をすることになりました。
父は夏場だけ働く季節労働者で、その時だけ金回りが良くなり、こんな九官鳥を買ってきたり変な置物を買ってきたりするのです。母はほぼ毎日パチンコです。
冬になれば稼ぎがなくなるのでどうするかと言えば、近隣住民に声をかけて、家で朝まで賭けマージャンです。違法とかなんとか、そんなことは子供だった私にはわからない事でした。
母には逆らうことはできませんでした。
口より先に手が飛んでくる人で、ビンタされて鼻血が出たことは何度もあるし、
オネショでもしようものなら、裸にされて家の外に投げ出されました。
それがたとえ真冬の雪の降る日でもです。
それが痛いとか寒いとか、そんなことはもう平気になっていたのですが、
一番嫌だったのが、真っ裸で外に放り出されたその姿を近所のおばあちゃんとかに目撃されることでした。それが死ぬほど嫌で、ワタシは気が狂ったように泣きながら謝って家に入れてもらっていたのです。
その様子を、玄関にいる九官鳥だけがいつも見ていました。
「お母さんなんて、死んじゃえばいいのに・・・」
「オカアサン ナンテ シンジャエバイイノニ!! キュイッ!」
「あぁ、ダメだよきゅうちゃん!そんなこと言ったら! 怒られるよ!!」
「オカアサン ナンテ シンジャエバイイノニ!! キュイー!」
「どうしよう・・・きゅうちゃん、変な言葉覚えちゃった・・・」
「「オカアサン ナンテ シンジャエバイイノニ!! オカアサン ナンテ シンジャエバイイノニ!! オカアサン ナンテ シンジャエバイイノニ!!」
「ダメきゅうちゃん!!」
「オカアサン ナンテ コロシチャエバイイノニ!! オカアサン ナンテ コロシチャエバイイノニ!! アハハハハ!!」






















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