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心霊

大鷹恵さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

シトロエンの女
短編 2025/10/04 19:42 558view

「大鷹さん。これは私が中学生の時にあった話なんだけど・・・」
ジェーン・メリーがホンダバラードスポーツCR-Xを運転する僕にこんな話を始めた。カーラジオからミゲル・ボセのヒット曲「OLYMPIC GAMES」が流れる。日本ではあまり知られていないスペインの歌手、ミゲル・ボセはダリオ・アルジェント監督のホラー映画「サスペリア」のマーク役の俳優だ(はっきり言うとチョイ役である)。この「OLYMPIC GAMES」はイタリアでは大ヒットを飛ばした曲なのだ。さて、メリーが中学校の時、帰りが遅くなった時があった。時間帯は19時くらいであった。その日は大雨であった。メリーは外を見て
「やけに辺りが暗くなったなぁ・・・。大雨が降っているし・・・。こんなことなら、折り畳み傘でも持ってくればよかったな・・・」
メリーはスマホを取り出し、ご両親に電話するときであった。その時、車のクラクションが鳴った。メリーはクラクションの方を見る。そこにはシルバーのシトロエンGSAが止まっていた。メリーは
「あまり見かけないシトロエンGSAを今日に限って見かけるなんて・・・。今日はついているのかついてないのか分かんないや・・・」
と思っていた。GSAの先代であるシトロエンGSは元々、シトロエンのプレステージカーのDSやCXの廉価版という位置づけであった。トヨタ車で例えると

DS、CX=クラウン
GS=コロナ

である。ただ、GSは同じ1970年に発売された世界各国の自動車に比べると、GSのカーデザインは最先端を行っていたと僕個人は思っている(プレステージカーのCXも同じことが言えるが)。1970年代のシトロエンのカーデザインは日本車のカーデザインよりか時代の最先端を行ったいたのだ。シトロエンから女性が出てくる。
「ハロー。あなたがジェーン・メリー?」
女性は私の事を聞いてきた。

「ええ。そうですけど・・・あなたは?」
「ああ、申し遅れました。私はアン・シェルトン。あなたのパパの友達よ」
「はぁ・・・」
「私、あなたのパパに頼まれて、ここまで来たのよ。さぁ乗って。今から家まで送るから」
メリーはアンに言われるがまま、シトロエンに乗り込んだ。アンはシトロエンを発進させる。アンはメリーの父と同じニュージーランドの出身であった。シトロエンのカーラジオからアメリカのカントリーシンガーのジュース・ニュートンの「Queen Of Hearts」が流れる。メリーはこの時、
「私の父の親友にアン・シェルトンなんて女性いたのかしら・・・」
と思ったという。アンはにこやかに笑って、
「この曲。良いでしょ?私のカラオケで歌う時の十八番だから」
という。メリーはアンを見て「綺麗な人だなぁ・・・」と思った。そんなメリーをよそにアンは
「あなたはどんなカントリーソングが好き?」
と質問してきた。メリーは考え込んだ。メリーはあんまり、カントリーミュージックに詳しないからだ・・・。そもそも、アメリカのカントリーミュージックは日本でも多くの人々に親しまれているジャズとは違って、日本ではマイナーなジャンルに近い(日本でいう演歌みたいなものだ)。日本では「カントリーロード」や「ロッキー・マウンテン・ハイ」で知られるジョン・デンバーを除くと一般層からはアメリカのカントリーミュージックの有名な歌手や曲は知られていないだろう(もっとも、ディープなカントリーマニアなら詳しいかもしれないが・・・)。だが、メリーは

「C・W・マッコールの「Convoy」」
と即答した。アンは
「ふぅん。サム・ペキンパーの「コンボイ」の原作となった曲ね。私はあんま好きじゃないわ。「コンボイ」自体、ペキンパー作品の中では大失敗作で有名よ。あの後から遺作の「バイオレントサタデー」の間まで映画を撮っていないし。もっとも、ペキンパーは引退状態に近かったわけだが。ま、それ以前、ペキンパーは「キラーエリート」という忍者が出てくるしょうもない駄作を作っていたわけだどさ。なぜか、日本ではなぜか大ヒットしているのは納得できないわね。あんなののどこがいいのかしら?」
と鼻を鳴らす。メリーは
「当時は東映のトラック野郎が大ブームだったからね・・・。ま、私のご両親はデートの時に映画館で「コンボイ」を見に行ったって何時も、思い出話をしていたから。ま、父はサム・ペキンパーなら「ガルシアの首」がベストだって言っていたっけな」
と言った。そうこうしていると、シトロエンはメリーの自宅前に着いた。メリーはシトロエンから降りる
「ありがとうございました」
と頭を下げる。アンは
「パパにあったら、今度会おうと伝えといてな。до свидания!」
と挨拶をして、シトロエンのエンジンを掛けて、シトロエンを発進させる。メリーも
「до свидания!」
と言って手を振る。メリーは家に入ると父にメリーを家まで送ってくれたアンの事を話した。父は青ざめながら、こう答えた。
「アンは俺の親友だった女性だ。アンは大雨の中、シトロエンを運転している時、事故にあって死んだんだ。それとな、メリー。アンが事故死した日(命日)というのは今日なんだ・・・」

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