シバは続ける。
「長男長女はイチダ、次男次女はニヤマ、三男三女はミヨシ、四男四女はシバ、って苗字を変えて、それぞれ家を作ったんだよ。そこで暮らしていた」
やがて子供が生まれ、村の中で結婚していく。しかし……事態は奇妙なものになった。
「子供たちは生まれるたびに、顔が奇形になったり、狂ったようになったり、まるで妖怪みたいな子ばかりだった」
山麓の村の者たちは、それを神の祟りだと恐れ、武器を持って襲撃した。
ほとんどは殺され、残った者たちはひっそりと山奥で身を潜めたのだという。
そしてシバは、静かに囁くように言った。
「僕たち兄弟は、その生き残りの子孫なんだ。
だから、僕たちが兄弟なのは、そもそも同じ血縁から生まれたからなんだ。……だから、兄弟なんだよ」
俺はその言葉を聞きながら、背筋が凍るような感覚を覚えた。
異様な夜の山、異形の兄弟たち、そしてシバの無邪気な声
すべてが現実なのか幻なのか、もう分からなかった。
シバが語り終えると、静かに手を挙げ、ある方角を指さした。
「おじさん……朝になったら、すぐに山を降りて。この方角をまっすぐ進めば降りられるから」
その指先を見つめながら、俺は胸がぎゅっと締め付けられるのを感じた。
シバはさらに、低くつぶやくように言った。
「僕たち兄弟は、この山で、人間たちに見つからず、永遠に暮らすんだ。
だって僕たちは……人間じゃない。この世にいてはいけないものなんだよ」
その言葉を残し、シバはゆっくりと、ひょっとこの面を外した。
その瞬間、俺の体は動けなくなった。
面の下にあったのは、もはや人の顔ではなかった。
肌は透き通るように白く、目は深い闇のようで、口元は人間にはあり得ない歪みに開いていた。
その異形の顔は、じっと俺を見つめている。
思わず声を上げそうになり、全身が震えた。
息を呑み、心臓が耳にまで届くほどの速さで打つ。
俺はそのまま、恐怖と呆然の狭間で立ち尽くしていた。
その後のことは、まるで夢の中のようで、鮮明には覚えていなかった。
気がつくと、夜は明け、淡い朝の光が山肌を照らしていた。
俺は慌てて身支度を整え、昨日シバが指さした方角を確認する。
霧がまだ少し残る山道を、一歩一歩慎重に踏みしめながら進む。
心臓はまだバクバクと早鐘のように打ち、昨夜の光景が頭から離れない。

























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