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kkさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

山の中で出会った兄弟の話
長編 2025/09/23 19:53 29,515view
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シバは小さく肩を揺らし、目を輝かせながら言った。

「もしかして……おじさん、眠れないの?」

俺はうなずくしかなかった。
慣れない環境、異様な兄弟たち、そして夜の不気味な声。寝ようとしても心が落ち着かない。

「なら、外に出ようよ」

シバはそう言うと、歩き出した。

「僕も眠れない時は、外に出て空気を吸うんだ。そうすると少し楽になるんだよ」

その言葉に、俺は恐怖と好奇心が入り混じる。
目の前の小さなひょっとこの面の男が、まるで何事もないかのように夜の山へ誘う。

俺は息を呑み、静かに後をついて行った。

夜の空気はひんやりとして、霧が足元にまとわりつくように漂っていた。
シバと並んで歩くが、俺の心臓は早鐘のように打ち続けていた。
胸の奥で、恐怖と疑念、そして好奇心がぐちゃぐちゃに絡み合い、頭が真っ白になりそうだった。

「……なあ、シバ」

思わず声が震える。

「お前たちは、いったい……なんなんだ?」

シバは少し首をかしげ、月明かりに照らされた仮面越しに、じっと俺を見つめる。
その視線には、子供のような無邪気さがありながらも、どこか言い知れぬ深さがあった。

俺の手は小刻みに震え、声も思ったより大きくなってしまう。

「兄さんたちは……なんで、あんなことをしている?どうしてお前だけ、普通に話せて、普通に笑えるんだ?俺に……何をさせようとしているんだ?」

息を整えようと深く吸うが、胸のざわつきは治まらない。
シバはその間もじっと俺を見つめ、少し微笑むように言った。

「あ〜……それはね、僕たち兄弟のこと……先祖のことを話せばわかるかな。
僕が教えてあげる……」

その言葉に、恐怖と同時に、少しだけ安心感が混ざった。
俺は思わず、足を止め、霧の向こうで揺れる木々の影を見つめた。
シバの声は、夜の山の静寂に溶け込むように響いた。

「昔々、この山の麓の村に、ある大家族が住んでいたんだ。兄弟姉妹が8人。長男と長女、次男と次女、三男と三女、四男と四女。それぞれが兄弟姉妹を愛していたんだよ」

俺は思わず息を呑む。血縁同士が……という話に背筋がぞくぞくした。

「でも親はそれを不純だとして許さなかった。だから、兄弟姉妹たちは家を飛び出して、山の奥で自分たちだけの村を作ったんだ」

6/8
コメント(1)
  • 読みやすくてめっちゃ好き 話の内容が入ってきやすい

    2025/09/25/09:24

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