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不思議体験

nickningenさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

悪霊の神社
長編 2025/09/05 00:16 28,888view
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さすがに父は土地勘があり、
僕の知らない道をびゅんびゅん駆け抜けていった。
山の麓まではあっという間だった。
「ここら辺だろ?」
そう言うと父は学校から山に向かう道を指差した。
父の額の汗を月明かりが照らす。
夜の闇に目が慣れており周囲の様子も分かるようになっていた。
満天の星空の下に真っ暗な山が聳え立っていた。
普段の僕なら怖がってこんなところに夜に来ない。
今は自分が見たものの真実を知り、何か岬の助けになるかもしれないと思っていた。
それでも、僕は自分の目を疑わずにはいられなかった。
震える手で指差す先には真っ黒な山の木々がこちらを見下ろしていた。
父は指差す先をじっと見ていた。
「・・・ここにあったはずなのに。」
声が震えていたかもしれない。
父はまるでその答えを知っていたかのように自転車の向き先を山から学校までの道に変えた。
「神主の神社のジジイに話を聞きにいく!
ぼーっとしてないで父さんの背中に掴まれ!」
今は父の行動に希望を託すしかない。
僕は父の背をぎゅっと掴んだ。
その背中がとても大きく感じた。

神主を祀っているという神社に着くと、父は自転車を降り、足早に古びた鳥居をくぐると境内の奥の社務所に向かっていった。
私も小走りで父の後を追った。
父は社務所の呼び鈴を鳴らすと、硝子格子戸を叩いていた。
「おーい、ジジイ!まだ起きてるだろ!?」
すぐに父よりは年上に見える年配の男が出てきた。
「浩二君じゃないか、こんな時間に悠君まで連れてきてどうしたんだ?」
年配の男は困惑した様子だ。
「和夫さん、親父さんを呼んでくれねぇか?
『悪霊の神社』って昔話あったろ?
倅がそれを見ちまったかもしれねぇんだ!」
奥から杖をついた老年の男がゆっくりとこちらに近づいてきた。
「ワシの遠なった耳にも届くぐらい騒ぎおって。
のう、悪ガキ。
また尻をしばかれたいんか?」
しわがれた声だが、それは不思議なほどよく耳に届いた。
僕は父の服の裾をぎゅっと掴んだ。
「まぁ、上がれ。」
そう言うとくるりと背を向け畳の間まで案内してくれた。
廊下の床がギシギシと軋む。
畳の間には背の低い机に座布団が1枚と肘掛けのある座椅子が置かれていた。
畳とお線香の匂いがする。
和夫さんが僕らに座布団を2枚出してくれた。
「ありがとうございます。」
と言って座布団を受け取った。
父と僕は和夫さんの父と思われる老人の対面に座った。

和夫さんは奥に引っ込んでしばらくすると、お盆に湯呑みを4つ乗せて戻ってきた。
「ごめんな、悠君。
この家はお茶しかないんだ。」
和夫さんは申し訳なさそうに僕と父の前にお茶を置いてくれた。
「いえ、お茶好きなので大丈夫です。」
何だか気を遣わせて申し訳ないと思った。
「よく出来た倅じゃのう。
お前とは大違いじゃ。」
と老人は父に愉快そうに言った。
「余計なお世話だ。」
そう言う父は、なんだかいつもとは違う意味で幼く見えた。
老人とその隣の席にもお茶を置くと和夫さんは腰を下ろした。
「自己紹介がまだじゃったの。
まぁ、お前さんが赤子の頃に会うたことがあるがの。
儂の名は守矢由紀夫、浩二の尻を叩くしか能のない隠居した老いぼれじゃ。
こんなんでも、昔はハンサムな神主での。
儂のことは先代かジジイと呼ぶがよい。」
と先代は愉快そうに笑う。
「や、山岸悠です・・・。」
先代に気圧されておずおずとお辞儀をした。
お茶を一杯啜り、先代が口を開く。
「喚いとったのを聞く限り、この悠君が悪霊の神社を見つけたそうじゃの?」
父は頷き、僕が朱色の鳥居の神社を見つけた経緯を話した。
「なるほど。
まさか本当に悪霊の神社があるとはの。」
老人の表情が翳る。
「倅は大丈夫なのか?」
父の顔は言い知れぬ恐怖と焦燥がごちゃ混ぜになったような表情をしていた。
「まず、覚悟を決めてもらう必要がある。
この先、何ひとつ、お前さん達が欲しがっているような答えを示してやれぬ。
それでも、聞いていくかの?」
底の見えない穴に落ちていくような、そんな気持ちになった。
それでも、何かひとつでも分かることがあればと思った。
僕は頷き、父もそれを見て頷いた。
「まず先に、お前が1番知りたがっている倅の無事についてだが。
・・・儂には何も保証してやれぬ。」
何か言おうとする父を先代が手で制した。
「まぁ、聞け。
儂も若い頃は神主一家という立場を利用して伝承がどこまで真実なのか調べまわって、お前さんの父のように『悪霊の神社』を探しておった。
じゃが、伝承というものはどこかで捻じ曲がって伝わるものじゃ。
何が真実かは、儂らには推測を立てることしかできぬ。」
先代はまたお茶を啜る。
「そもそも浩二、儂らの集落をどう思うかの?
苦しいか?何事もなく平和か?」
父は意表をつかれたような表情をし、少し考える。
「まぁ・・・退屈なくらい何事もないな。

平和だと思うが、寂れてはいるな。」
先代はカカカと笑う。
「村おこしでもせな、寂れていく一方じゃの。
じゃが、平和には違いない。
ここには代々この土地の記録が受け継がれてきておる。
その中のどの時代でもの、大きな災害、飢饉や戦災などの苦しみの記録がないんじゃ。」
僕は話の行方が掴めず黙って聞いていることしかできなかった。
父をちらりと見やると、眉間に皺が寄り何かを考えているように見えた。
「普通ならの、荒ぶる神、祟り神の伝承が残る土地では大きな災害や飢饉による悍ましい苦しみの記録が残るもんでの。
・・・それこそ、公にはできんような地獄のような苦しみの記録じゃ。」
先代は一瞬押し黙った。
「つまり、儂らのような人間から見ると、この土地は穏やかな神に運良く守られているようにしか思えんのじゃ。」
僕は「悪霊による災害」という伝承と土地の記録が合っていないと思った。
「そして、お前さんが訪れたという神社なんじゃが・・・。
100年以上前に1件だけ同じような記録があっての。
同じように、山の麓の鮮やかな鳥居の神社に何人かで訪れ、
そのうち1人が失踪したんじゃ。」
僕の頭に金槌で殴られたような衝撃が走った。
そうなると僕らのうちの誰かがいなくなるかもしれない。
「その1件の記録だけなら、ただの見間違いか勘違いか、儂自身よく分かってはおらんかった。
じゃが、お前さんの話を聞く限り、その神社は本当に存在するのかもしれぬ。」
この話の先に希望があるのだろうか。
冷めたお茶を飲む手は微かに震えていた。
「神社と失踪者の関連性は憶測でしかないがの、失踪がその神社に祀られている神の御業だとすると、この土地の神さんは土地を守ると同時に人を隠しなさるのじゃ。」
これが僕ならまだいい。
もしも岬だったらと思うと気持ちがざわつく。
「それに対して儂らが何をできるかという話になるんじゃが。
これが悪性の神ならの、神社に訪れた人間は全て隠されておる。
1人だけだというならの、それは何かしら神さんの琴線に触れてしまったのじゃ。
そうなると、理解できない善性もしくは身勝手な行いに対して、儂らはお願いをせんといけなくなるのじゃ。
そして、この願いはほぼ通らん。
やることはやってみるがの、お前さんらはいつも通り生活し、座して待つ他ない。
悪意ある神であれば代わりに儂らの命を差し出して願いを通すことができるかもれんがの。」
父は意気消沈した様子で項垂れていた。
そして、しばらくすると立ち上がった
「・・・すまん、ジジイ。
世話んなった。
体には気をつけろよ。」
先代の声色が僅かに明るくなった。
「まだ、悪ガキに心配されるほど歳を食っとらんわい。
やれることはやってみるがの、期待するな。」
そう言うと和夫さんが玄関まで送ってくれた。
別れの挨拶をして帰路についた。
星々はいつも通り素知らぬ顔で輝き、僕達を見つめていた。
帰り道に岬の家の前を通ったらもう灯りが消えていた。
かなり遅くなってしまったようだ。

10/17
コメント(2)
  • 随所に差し挟まれる小賢しいレトリックがいちいち鼻につく。
    このサイトの読者層には刺さるのかもしれないけど。

    2025/09/09/05:48
  • ちょっと意味がわからない

    2025/09/11/20:22

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