家に帰ると荷物を片付けて縁側に腰掛ける。
台所で母が料理をしている音が遠くに聞こえる。
僕は嫌なことや不安があると縁側で寝そべって星空を見る。
昔、父に夜空の星のどれが流れ星か聞いたことがあった。
「流れ星って、なんか願い事でもすんのか?」
と父は言うので僕は頷いた。
「流れ星なんてのは願いを託した途端に宇宙のチリになっちまう。
それより、ほらあの星を見てみろ!
遠すぎて止まってるようにしか見えんが、どっかしらに流れていってんだ。
だから、空に光ってるどの星も流れ星だ!」
縁側で星空を見るたびにその時のことを思い出す。
僕も願いを託すなら宇宙のチリより、僕達が死ぬまで輝き続ける星々の方が何かを叶えてくれそうだと思った。
拝殿に蠢く黒い影を思い出す。
夜空の星々を見る。
今の僕なら何を願うだろう。
あの神社が悪霊の神社でないことだろうか?
岬のお母さんが無事に合唱祭を聴きに来てくれることだろうか?
それとも、岬だけでも無事であることだろうか?
そんなことを考えていると、頭上で畳を踏み締める音がした。
「学校で嫌なことでもあったか?」
そう言いながら父も縁側で寝そべる。
「父さん言ってた神社の話って本当の話?」
僕は父に話を切り出す。
「あれは嘘だ。」
あっけらかんと父が答える。
「嘘と言っても、悪霊の神社を見つけたってとこからが嘘だ。
あの話をじいさんに聞いたのと、悪霊の神社を探しに行って見つからなかったのは本当だ。」
父が星空を眺めながら付け加える。
「じゃあ、父さんのじいちゃんの話は本当なの?」
嘘じゃない部分をもう少し掘り下げたいと思った。
「取り調べみたいになってきたな。」
と父は苦笑する。
「まぁ、悪霊の神社はなかったな。
でも、中学校から山に行く途中にある神社に、村を救った神主が祀られてるのは本当だ。
今のお前よりも小さい頃な、近所の悪ガキと一緒に神社の賽銭箱にどんだけ罰当たりなものを入れられるかって度胸試しみたいなことしてたんだよ。
最初は変な形の石ころとかだったんだけど、
そのうち虫とか蛙とか入れだして、
しまいにゃ仲間の1人が賽銭箱にションベンしやがってさ。
そこを運悪く当時の神主さんに見つかってな。
半日くらい説教くらって、そん時にこの神社の成り立ちについて何度も聞かされて、
おかげで今でも憶えてやがる。」
父はどれだけ愚かな人間だったのだろうかと恥ずかしさで一杯になった。
「・・・それで、その神社ってどんな神社なの?」
「今日行ってきたんじゃないのか?
古ぼけた小さい神社だよ。
そろそろ建て替えた方がいいよな。」
ざわりと冷たいものが身体中に広がった。
咄嗟に身を起こす。
「や、山の麓にある綺麗な神社は?」
父が怪訝な表情をする。
「山の麓に神社なんてないぞ。」
僕は自分でも血の気が引いていくのが分かった。
拝殿の奥の闇が僕の脳にまとわりついていた。
「・・・お前、まさか見つけたのか?」
父の真剣な顔を初めて見たかもしれない。
父は少し考え込んでいる。
何を考えているのかは分からなかったが、その目には鋭利な光を宿していた。
「・・・場所は分かるか?
念のため確かめる。」
そう言うと父は立ち上がり、縁側に自転車を回してきた。
僕はそれを目線で追うことしかできなかった。
「後ろに乗れ!」
僕は頷いた。
僕自身、僕が見たものを確かめたかった。
もう夜だが父がいれば心強い。
「母さん!悠とちょっと神社まで出てくる!
遅かったら先に食べててくれ!」
台所の母に向かって父が叫ぶ。
返事も聞かずに父は自転車を漕ぎ始める。
後ろで母が何かを叫んでいたが、風を切る音で何を言っているか分からなかった。
星々が後方に流れていく。
「あの神社が悪霊の神社でありませんように。」
僕はそれだけを願っていた。























随所に差し挟まれる小賢しいレトリックがいちいち鼻につく。
このサイトの読者層には刺さるのかもしれないけど。
ちょっと意味がわからない