私の住んでいるアパートは築年数が深く、白い塗装は風雨に晒されて禿げかけており、ドアの蝶番は奇妙な声を上げる。
エントランスなどという豪華なものはなく、部屋前までは誰でも歓迎していた。
私の住む101の前には各部屋のポストが置かれており、ドアスコープを覗くとまず101のポストが目に入る。
最近、101のポストに奇妙な手紙が投函される。
その手紙は彼岸花のように赤く、内容の不吉さを連想させた。
手紙には平仮名、片仮名、漢字に似た文字が黒々と書いてあった。
どれも少なくとも日本語には存在しない文字で読めなかった。
その手書きの文字の温度に気持ち悪さを感じたが、
最初は近所の子供の悪戯だと思った。
そこでドアスコープからポストを監視し、私のポストに手紙を入れる悪戯っ子を逆に驚かせてやることにした。
その日はドアスコープ越しにポストを監視し続けたが、空振りに終わった。
郵便局員のような人間以外、投函する人間はおらず、奇妙な手紙も届かなかった。
毎日というわけじゃないのか。
手紙が届いた時からいつ投函されたのか予想しようと思った。
手紙は土曜日の昼には既に投函されていた。
それならば、金曜日にまた監視をしてみよう。
もし、悪戯小僧の仕業じゃなかったらどうしよう。
暗雲がじわりと広がる。
意図が分からない。
何者か分からないものの視線だけ感じる。
そういう居心地の悪さがあった。
金曜日になると大体朝9時くらいからポストの監視を始めた。
日が天頂に登る頃に休憩がてら昼食を買いに行った。
日差しは眩しく、蒸し暑かった。
辺りには蝉の鳴き声が反響していた。
歩くたびにレジ袋がガサガサと揺れていた。
戻る時と昼食後にポストを確認したが手紙は入っていなかった。
夜21時くらいまでポストを監視し、トイレに行った時は、帰ってくるたびにポストの中身を確認したが、手紙は届かなかった。
空振りか。
決まった日に届くわけじゃないのか。
しばらく様子を見て、何もなければもう忘れよう。
そう思ってその日は就寝した。























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。