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心霊

放浪者さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

お通夜の夜
長編 2025/08/27 14:48 7,111view
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 その後も会話は続いていたとは思うが、耳鳴りにも似た金属音の様な雑音が混ざり始め会話がかき消されてこれ以上聞き取る事は出来なかった。

 その後はそのまま寝てしまっていたのだろう。目を開けると辺りは明るくなっていて、ハッとしてスマホを見るとすでに午前七時を過ぎていた。

 急いで布団から飛び出しリビングへ向かうと、すでに姉は身支度を整えて姪と一緒に朝食を食べていた。

「おはよう。早く準備しなよ。あと兄貴も起こして?全然起きないの」

 兄は座椅子に座ったまままだ眠っていた。僕は兄を起こしながら身支度を整えた。

 兄はそのまま眠ってしまっていたらしくテレビも電気をつけっぱなしだったそうだ。

「悪い。いつの間にか寝てたわ。まぁ何も起きてないみたいだしよかったな」

 大きなあくびをしながらそう呟くと兄も身支度も整え、四人で葬儀場へと向かった。

 車の中で兄に夜中に誰か来なかったかと尋ねたが、眠っていたから分からないし、玄関もしっかり鍵がかけてあったから誰も来てないだろうと言う事だった。

 あれは夢だったのだろうか。きっと夢だ。姪があんな事を言い出すもんだから夢にまで出てきてしまったのだろう。

 車は葬儀場へと到着し、全員で中へ入っていく。ひとしきり親族に挨拶を終えると一人の男性が近づいて来た。

「姪の面倒を見てくれてありがとう。処置してもらってだいぶ落ち着いてきたみたいだから一旦戻って来たよ」

 その男性は病院から戻ってきた姉Bの旦那だった。

「腹痛の原因は何だったんですか?」

 兄は聞いた。

「急性虫垂炎だって。突然起こった割には病状がかなり進行していて危なかったって。家でもお腹痛いとか言っているのを聞いた事無かったから不思議だよ。先生もこんな事あるのかなって首を捻っていた」

 僕はそれを聞いた瞬間鳥肌が立った。旦那は今初めて僕達にその事を伝えた。事前に誰かに伝えていたと言うことでもなく、今日の朝病院を出てそのままこの葬儀場に来て僕達に話したのだ。

 偶然にしては完全に一致している。

 男達が話していた内容。全てが一致する。予知夢と言ってしまえば聞こえはいいが僕にそんなスピリチュアルな才能は無い。

 誰かにこの事を話したかったが信じてもらえるわけもないし、葬儀の前に不穏な事を言いたく無かったからこの出来事は胸にしまいこみ葬儀へと挑んだ。

 祖父の葬儀は何事もなく無事に終わり、親戚一同と共に祖父宅へと帰った。

 そういえば昨晩置いておいた盛り塩などは片付けたのだろうかとリビングへ向かうと、そのままの状態で放置されていた。片付けようと皿に手をかけた時、異常に気がついた。

 小皿に乗せられていた真っ白でサラサラだった塩は、赤黒いドロドロとしたタールの様に物体へと変化していた。塩ってこんな色に変化するのか?たった一晩でこんな状態になる事などあるのだろうか?

 兄や姉に見せたかったのだが家の外で親族と話している様子だったので他の家族に気付かれない様に片付けた。そういえばドアノブにも手拭いを結んでいたなと思い、ドアノブを見ると布が付いていない。ドアノブの真下に落ちている。

 布を拾おうと手を伸ばした時

「ん?臭!」

 突然鼻をつく異臭。下水に生ゴミを混ぜた様な臭い。布も盛り塩同様全体的に赤黒く染まっていて所々煤でも拭き取ったかのように黒ずんでいた。とてもそれを広げて見てみようとは思えず、その布をビニール袋に入れてゴミ箱へ捨てた。

 最後に姉と姪が寝ていた枕の上に置いていた盛り塩を回収しにいく。すでに布団は片付けられているが、盛り塩はそのままそこに置いてあった。

 こっちの盛り塩は変化していなかった。

 そういえば話していた連中「睨まれる」と言っていたな。

3/4
コメント(1)
  • いい話、、

    2025/09/23/15:47

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