私が中学生だった頃、S君と言う同級生がいた。特別仲が良かった訳では無いが、席が隣同士という事もありよく話をしていた。
S君は非常に穏やかな性格をしていて、いつもニコニコと笑顔を絶やさず誰に対しても優しい人だった。S君は言霊という物を信じているらしく、人の悪口やネガティブな発言を全く口にしなかった。
ある日、昼休みを終え次の国語の授業の先生が教室に入ってきた。その先生は自分の機嫌を隠す事なく顔に出すタイプでその日はかなり機嫌の悪い様子だった。
授業が始まり、クラスの不良生徒数名が遅刻しているのにも関わらず、面倒臭そうな様子で教室に入ってきた。
先生は何か言いたげにその生徒達を睨みつけていたが、不良に注意するのを恐れたのかその怒りを何故かS君に向けてきた。
「おいS!何をニヤニヤしているんだ!お前は俺を馬鹿にしてるのか」
その言葉から始まり、ありとあらゆる暴言を投げつけ最後にS君の机に拳を叩きつけた後、自分の力を誇示するかの様にクラスを見渡した。
S君は何も言い返す事なく俯いたまま耐えた。
その後、授業が進んでもS君は俯いたままだったので心配になった私は、先生の隙を見てS君に近寄り声をかけようとした時、S君がブツブツと何かを言っていた。
「死ね死ね死ね死ね死ね〇〇死ね死ね死ね死ね死ね」
S君は俯いたままこれでもかと目を見開き、先生の名前とその呪いとも取れる言葉を交互に吐き続けていた。
次の日、担任が神妙な面持ちでクラスを入ってきた。
「昨日の夜、〇〇先生が交通事故に巻き込まれて亡くなった」
国語の教師の名前だった。突然の知らせに各々驚嘆の声をあげた。ただS君を除いては。
彼は小さく頷きながら満面の笑みでその知らせを聞いていた。
先生が亡くなったのは偶然だったのか呪いの言葉のせいだったのかは分からないが、S君のあの満足げな顔はしばらく忘れる事が出来なかった。

























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