私が運転免許証を取得した十八才の頃、教習所で出会ったA.B.Cという三人の男友人達と毎晩のように遊び回っていた。
その頃特にハマっていたのが心霊スポット巡りで廃病院や廃屋、夜の廃村など地元で有名な場所は大体回ったと思う。
ある程度の心霊スポットを行き潰してしまって、暇を持て余していたお盆前の八月。
私達四人の中でも特に心霊好きだったBがこんな話を持ってきた。
「結構遠いんだけどさ。〇〇村に行く山道に〇〇トンネルってあるの知ってる?」
私達三人は首を横に振った。
「いや。大学の友達に聞いたんだけど、そいつその村出身でそのトンネルあの世とこの世を繋ぐトンネルとか言われてて地元では有名らしいんだよ。面白そうだろ?行ってみない?」
特別行きたかったわけでは無いのだが、ある程度の心霊スポットは行き尽くしてしまっていたし、暇つぶしにはなるか。と三人とも二つ返事で行く事が決まった。
次の日の夜十時。私達はBの車に乗り込みそのトンネルを目指して走り出した。
目的地までは大体二時間とナビに表示されていたが、夜で車通りもそこまで無いだろうから、到着を一時間半程度と見てゆっくりと運転しながらコンビニに立ち寄ったりしながら向かった。
思っていた以上にゆっくりし過ぎたのかトンネル付近に到着した頃には午前0時を過ぎていた。
Bは車をトンネルの入り口へと近付けた。車のライトでトンネルの入り口付近が照らし出される。トンネルと言うよりは洞窟に近い見た目で、本当に山をそのまま貫いてとりあえず通れるようにしたという無骨な見た目だった。もちろんトンネルの内部に照明などはなく、ただ真っ暗な空間が奥へと広がっているだけだった。
「思っていたよりもヤバめだな」
Cが助手席からトンネルを眺めながらそう呟いた。
「確かにあの世と繋がってそうなくらい不気味だな。これ今も使われてるトンネルなんだろ?」
そう私が聞くとBはルームミラーでこちらをチラッと見て答えた。
「多分な。村に行くにも出るにもここ通らないとぐるっと遠回りするか山を越えないといけないだろうからな」
「いや!ここ使われてないだろ!よく見てみろよ」
AがBの言葉に被せるように、後部座席から運転席と助手席の間へ身を乗り出しトンネルを指差した。
Bが「そんなわけないだろ」と呟きながら少し車を前進させながらライトをハイビームに切り替えた。
「ほら!これは無理だろ」
そう叫ぶAの隣から私も首を伸ばし更に奥まで照らし出されたトンネルを見た。
トンネルの天井や横壁から染み出した山水が水溜りを作り、所々天井の岩盤も落下していてとても使われているトンネルには見えない。
「お前これ心霊的な怖さより事故的な怖さの方が強いんだけど」
そう言うCの隣でBは頭を掻きながら
「まぁちょっとだけ進んでみようぜ」
全員の制止する声を無視してBは車をトンネル内へ進める。
ちなみにこのトンネルで起こる心霊現象は、心霊トンネルあるあるなのだが、トンネル内でクラクションを鳴らしライトを消してエンジンを止めしばらく待つ。と幽霊が現れるというものだった。同じような手順を踏まなければいけない心霊トンネルは何度か行った事があった。もちろん何もなかった。だから始めから暇つぶしになればいいか程度で期待はしていなかった。
Bはこれを試したかったのだろう。車全体がトンネルに収まるとクラクションを鳴らしライトを消してエンジンを止めた。目の前が一瞬にして暗くなった。
「おい。もういいって!危ないからさっさと出るぞ!岩が落ちてきたら洒落になんねーよ」
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