周囲には人はいなかったし、誰も助けなんて来るわけがない。
多分幽霊の姿が見えているのもあたしだけだろうから、たとえ誰か来たとしてもいきなり男の身体から血が吹き出しているようにしか見えないだろう。
うめき声を上げながら、数分もしないで男は絶命したっぽい。
完全に動かなくなったし、医療素人のあたしでも死亡確認できる。
あ、救急車とか呼んだほうがいいのかな。
でも意味ないか。
だって、幽霊少女の隣には、たった今滅多刺しにされた男の幽霊っぽいのが立ってるから。
第一発見者として警察に通報したほうがよかったんだろうけど、まあいいやと思ってあたしは帰宅する。
満足そうな幽霊少女の顔を見て、無事に復讐を遂げたお祝いを心の中で呟いた。
後日、バス停前を通ると、そこにいつもの泣き虫幽霊少女はいなかった。
というか、幽霊少女はいたけど、泣いてなかったし、隣にはこの前の男が気まずそうな顔で立っている。
「あ、お久しぶりです!」
嬉しそうに破顔して、こちらに向かって手を振る幽霊。
彼女は隣の男と腕を組んでいて、というか逃さないぞとばかりにぎゅっと強い力で腕を抱きしめてるみたいな感じだった。
「私達、付き合うことにしたんです」
「……へー」
まあ、おめでとうございますって適当な感じで言うと、「ありがとうございます!」ってニコニコ顔の幽霊少女。
「えへへ、多分ビックリしてますよね。自分でも意外だなーって思いますもん。でも、彼も子供の頃から孤独だったみたいなんです。そういう背景があって、寂しさから通り魔みたいなことしちゃったんです。だからもう寂しさなんて感じさせないように、私がずっとそばにいることに決めたんです。もう通り魔とかそんな悪いことさせないように、ずっとずっと、一生離れないでそばにいようって」
あーとか、なるほどとか、なんか適当に相槌を打ちつつ男を見ると、もう逃げられないと悟ったらしい彼は、顔を引き攣らせながらずっと斜め下を向いていた。
ていうか、死者の言う『一生』っていつからいつなんだよ。
「それじゃ、失礼します」
てっきり地縛霊の類かと思いきや、普通にどこかへ行ってしまう幽霊二人の背中を見ながら、あたしは静かに独りごちる。
やっぱりあの子――
「――センスないな」


























私は女性だけど、美少女の霊さんにはちょっとドキドキしました。