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東京に戻った俺は、授業など上の空だった。
剛さんの大きな背中と、真理さんの優しさ、涼介の無邪気な笑顔が反芻しては消えていく。
「まずいな。このままじゃ落単まっしぐらだ。」
俺が民俗学の教授の元へ訪れたのは、東京へ戻って3日経ってからだった。
「なるほどね。君の地域のことはよく知らないけど、ため池には色々面白い逸話があるよ。」
昔、何とかの大飢饉とかが来た時、ため池には大量に死体が放り投げられた。
いわば口減らしだ。
殺されたのは主に子供。
その当時の名前についてはまだ調べてないが、多分、チヨって名前も一般的だったはずだ。
ここからは俺の仮説でしかない。
チヨは、捨てられた子供のひとりだ。
何らかの拍子に、浜田さん達はチヨと出会った。
チヨは親に捨てられて寂しかったのだろう。
浜田さん達はチヨに呪われた。チヨのために、毎日ご飯を渡して、チヨの為に笑った。そして、最後はチヨに呼ばれて、ため池に沈んだ。
……馬鹿馬鹿しい。 おかしくなったんじゃないか?俺は。
そんな話ある訳が無い。そう思った。
でも、そうは言ってられなくなった。
ある晩俺は夢をみる。夢の中で俺はため池のほとりに座っていた。
ため池には、浜田さん家族3人が”笑顔”で立ってて、その横にボロい布切れを着た、痩せた女の子。
女の子が俺を指さして言うんだ。
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『つぎは、あなたがきてくれるの?』って。
どうやら、またあのチャラ男から話を聞かなきゃならないようだ。
続
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