この話は、俺が30歳になる頃に本当に体験した話です。ヒトコワにも不思議体験にも該当すると思いますが、ヒトコワの 方を選択しました。
勿論身バレを避けるために、一部フェイクを入れました。
俺は一度、失業保険を受給したことがある。
いわゆるリーマンショックがきっかけで、不況がさらに深刻になった時だ。新卒時から働いたが、この会社で過ごす未来が見えなくなったので、退職を決めた。人の悪口を言うのはよくないことだが、これだけは聞いてほしい。俺の明るめのベージュのコートに、赤のラッションペンで3箇所もシミをつけた奴がいたのだ。
だいたい犯人は分かっていたが、特定できるだけの証拠がない。疑わしいというだけで人を問い詰めるわけにもいかず、俺はただそいつを憎むしかなかった。
(あいつを会社ビルの階段から突き落としたら、死んでくれるかな。いや、単に怪我をするだけか。)
(あいつを刺し殺すなら、ついでにあいつの顔も誰だか分からないように、グッジャグジャに傷つけてやるかな。あいつの女性的な部分もナイフでグジャグジャにしてやるが、もう二度と機能しないように体の奥深くまでドスッと刺してやるかな。それもメッタ刺しだ。汚らわしいお前の家族も同じようにしてやるから、覚悟しとけ。)
(犯すという意味じゃねえから、安心しな。つーか、お前なんか女じゃねえんだよ。不細工の根暗が!)
勿論、会社ではこんな乱暴な言葉など使わない。でも、こんな残虐なことを考える自分のことも、嫌になった。ストレスの為か、俺は耳に異常を感じるようになった。そうして桜の花びらが舞い散るなか、俺は惨めな気持ちで会社を去った。
失業保険はありがたいことに、すぐに受給できることになった。突発性難聴の診断書と、前職でのいじめの証拠を取っておいたのが良かった。転職活動をしながらも、俺はまだ前職のあのクソ女への憎悪を忘れられないでいた。
俺はある日、いいことを思いついた、それは前漢の高祖の皇后(のちに后を廃される)だった呂后が、夫の愛妾にやったことを真似ることである。
俺の実家のトイレは、当時和式の汲み取り式だった。俺はある日の夜中に、前職のあの醜女が連絡ノートに書きやがった俺への罵詈雑言のコピーを、粉砕してやった。俺のこの手で一つ破るたびに、憤怒・厭悪・宿怨・悔しさ・哀しみなどを込めて。
(お前なんか、彼氏に逃げられちまえ。お前がやったことは、立派な器物損壊罪だ。お前のその性悪は、いつかは必ずお前自身に返ってくる。死ね。くたばれ。孤独死しろ。)
そうして便壺の中にコピーの破片を捨ててやったら、実に胸がすっとした。
幸い、次の就職先はわりとすんなりと決まった。俺は大都市で相当ハードな研修を受け、K市の営業所で3か月の試用期間に入った。
そしたら、毎日てんやわんやだった。最初は他の営業所から何人か先輩社員さんが応援に来てくれたが、とにかく業務量が多いため、じきに俺はほぼ一人で営業所を切り盛りする羽目になった。みんな自分のやることがあるのだから、仕方がない。正直作業量はきつかったが、それ以上にイヤ~なものがあった。それは営業所のビルに隣接する、広大な墓地だった。
(くそう、俺の馬鹿め、騙された!だから面接会場がG市駅前のカフェだったのかよ!)
今更じだんだを踏んでも遅かった。俺はすぐさま採用が決まって浮かれていたから、念のために営業所の辺りをネットで確認するのを怠ってしまったのだ。
恐ろしいものは沢山あるけど、そのうちの一つが【無知】だと俺は考えている。【知らなかった】ことで、俺はこのような損をした。愚かな俺のようにならないために、皆さんにも、調べられるものはできるだけ調べておくことをお勧めする。























花蘇芳(沈丁花)です。一部単語の間違いがありましたので、訂正しました。やや言葉足らずな箇所もありましたので、文を付け足しました。これまで読んでいただいた皆さん、大変失礼しました。
花蘇芳(沈丁花)です。一部誤字と、意味が分かりにくい箇所がありましたので、訂正しました。またもや!です。あわてんぼうな自分が嫌になります。これまで読んでいただいた皆さま、本当に申し訳ありませんでした。
沈丁花(花蘇芳)です。再度加筆修正しました。