神社の狗

知り合いのある女性が同じ夢をよく見るのだと言っていた時期がある

その夢にはいつも同じ神社が出てくるのだ

あまり毎晩同じ夢を見るのである人にその様子を詳しく語ったところ

どうもそれは九州の阿蘇神社ではないかと言われた

それを聞いて彼女はさっそく東京から九州の阿蘇神社まで出かけていった

はたして・・・その阿蘇神社は夢で見たものとそっくりそのままであった

それほど大きな神社でもないのだが
それにしても参拝の人影もなく、宮司さんも巫女さんの姿も見当たらない

小さい社の裏に回ると
大きな木の切り株があったので彼女はそこに腰掛けた

いつの間にそこに現れたのか？
犬が二匹こちらを見つめている・・・

その犬は何とも形容のしがたい美しい犬であったのだという

一匹はスピッツをひと回り大きくしたような純白の毛並みの犬

もう一匹はさらにひと回り大きく柴犬によく似た純白の犬で
堂々とした威厳さえ感じられる

どちらもよく手入れがしているが首輪がない

この二匹を見た瞬間彼女はこの世のものとは思えない凛々しさと美しさを感じた
神々しいとさえ思ったという・・・

その二匹の犬は呼びもしないのに近づいてきて

膝の上に頭を乗せ、彼女の顔をのぞき込むように甘えてくる

彼女が犬の頭を三回なでると
二匹の犬は社の向こう側に向かって歩いていった

二匹の後姿が非常に仲睦まじく労わりあっているように見える

思わずその犬の後を付いていくと
犬とほぼ一緒に社を曲がったはずなのに・・・・
その犬の姿がかき消えたように見当たらない

はて？と思って辺りを見回すと
そこには数人の参拝する人や巫女の姿があった

その巫女の立ち居振る舞いを見ていると
つい先ほどまでいなかったとはとても思えなかったと彼女は言う