中3の時に私塾に通っていた。
1クラス4人程度の少数だった。
土曜日は翌日が休日なだけに、授業が終わると先生も交えてダラダラお喋りしたりするようなまったりした塾だった。
その日は怪談話になった。
怪談話って前もってしようと決めてするものではなく、何かの拍子に突然始まるものだ。
ロウソクまではないものの、部屋を暗くして話しているとだんだんと盛り上がりを見せた。
お茶とあられを飲み食いしながらしたのは鮮明に覚えている。
誰かが先生に怪談をねだった。
先生は霊体験はないけどと前置きしたうえで、こんな話をしてくれた。
「大学生の頃にね、仲間内でキャンプにでかけたの…」
先生は女性だが、落ち着いて淡々と話すので皆が引き込まれて黙った。
「2台に分乗して出掛けたのね。先生は前に走る車に乗ってた…山のキャンプ場だから峠道をスイスイ登ってるとトンネルに出くわした。夜ならちょっと怖そうなトンネルだった。そのトンネルを出てしばらくすると、後続車が着いてきてないことに気づいて車を停めたの…」
先生はそこでお茶を1口飲んだ。
「それっきり後ろの車は行方不明…おしまい…」
皆がキョトンとした。
えっ、もう終わり?…
後続車に乗ってた先生の友人3名は未だに行方不明だという。車ごと。
トンネルに入った時、後続車がライトをつけたところまでは先生らも確認していたそうだ。
だからトンネル内で消失したとしか思えないと言う。
最初こそあっけにとられたが、じわじわと得体の知れない怖さが訪れた。
先生は皆から色々な角度から質問責めにされた。
結局のところ未だによくわかってないとしか言い様がないと先生は言った。
もちろん警察に通報し捜査もされた。
先生は一旦部屋を出てファイルを持ってきた。
新聞の切り抜きがスクラップされていた。
けっこうぼかして報道されたようだったが。
たぶん先生達は様々な仮説をいっぱい立てただろうが、結局はわからないとしか言い様がないのだ。
「勉強もこれくらい熱心に質問してくれたらねえ…」
先生は苦笑していた。
























後日談…
先生と二人でいる時に尋ねたことがある。
あの消失した車にもしかしたら先生の好きな人が乗ってたんじゃないですかと…
「あら、どうして?…笑」
先生は未婚だった。
塾の先生を祖母の家(かなり広い)でしているが、どこか世捨て人のような雰囲気があった。
「想像にお任せするわ…」
そう言ってかすかに微笑んだ…