目が見えていないのか?
布をかぶっているからなのか、元々目が見えない人なのか、そもそも人かどうか分からない。
その得体の知れない何かは、先程と変わらず
歩いてはぶつかりを繰り返している。
これだけぶつかっていれば、いくら寂れた温泉宿とはいえ、誰か従業員が気づくはずなのに誰も対応しない。
堪らなくなった俺は部屋から受付へ電話をかけ事情を説明した。
従業員が、すぐに外に出て確認をすると言い電話が切れた。
カーテンからもう一度下を覗くと、さっきと変わらず、その黒い何かは、入り口にぶつかるのを繰り返していた。
しかし、いくら待てど従業員は出てこない。
もう一度受付に電話すると、さっきと同じ従業員が出た。
従業員は、入り口には何もいなかったと困ったような反応をした。
山の中の田舎だからアナグマなど動物がふらつくことはあるかもしれないとは言っていたがそんな可愛いものではない。人というか黒の着ぐるみを着たような何かが同じ動作を繰り返しているのだ。
俺はまた窓に行き、カーテンから下を覗いた。
さっきと景色は変わらずぶつかりを繰り返していた。
いや、スピードも若干速くなっているように見える。
だが、一瞬にしてその動きは止まった。
止まった後、その黒い何かはゆっくりと俺の方を見上げた。
いや、顔も身体もわからないのだが、感覚的に動作がこちらを見上げている素振りにしか見えなかった。
まずい、目が合っている。
目なんてついていないのに、目が合っている感覚になっている、ゾッとして自分自身もその物体から目が離せない。
文字にしてみると伝えきれず申し訳ないのだが、普段想像する白の布を被った感じのお化けが黒バージョン、なおかつ顔がない、のっぺらぼうをイメージしてくれればいい。
その不気味な身体がこっちを向いているのがわかる。目もないのにこっちを向いているその雰囲気がわかるのだ。
立ち尽くした俺を我に返してくれたのは次男だった。パパも遊ぼう、と足に抱きついてきたからだ。
ぴょんぴょんと歌いながらくっついてきて、俺は、はっとしてカーテンを閉め、遊んでいる子供達を抱き抱えた。
布団に寝かせ、3人身体が離れないようにくっついて寝た。見てはいけない。子供達にあの物体を正面から見せては絶対にいけない。
なぜと聞かれても答えられないが本能的にヤバい気がする。
不安と緊張が一気に押し寄せる。
布団の中でも騒ごうとする子供2人を落ち着かせ、俺はひたすらに目を瞑った。

























途中まで情景が浮かんでめちゃくちゃ怖かったけど最後の「後部座席の奥の窓に映ったのは、坂を登ったとこでピョンピョンと飛び跳ねるあの黒の物体だった。」の部分がどうしてもどういう状況かわからなかった…
長女と次男⇐この書き方だと、間に長男がいる3人兄弟では