電車にいた人
投稿者:誠也 としひら (5)
短編
2024/08/01
23:27
2,796view
母親から聞いた話。
母親は今でいうバリキャリで、大手広告代理店で働いていた。
朝は6時台の電車に乗り、帰りは終電かその前か。
そりゃ心身ともにストレスを感じるわけで、帰りの電車ではため息をつきながら絶望感に苛まれていた。
乗客もまばらな中、母親からみて正面右端に
赤ちゃんを抱っこしてフンフンと歌ってる女がいた。
「こんな時間にバカ親が…」
そう思い、母親が冷たい視線を送ると目が合い、
その女はこちらに気付きハッとしたように頭を下げて歌うのをやめ、動きを小さくし、赤ちゃんをあやしていた。
その申し訳なさそうにしている女を見ると、いい年で独り身、毎日を仕事に費やしている自分がなおさら惨めに感じ、益々苛立っていた。
駅に着き、電車を降りる際、その女を見下ろし睨みつけた母親は驚愕した。
女が抱っこしていたのは
「ペンで顔が描かれた木の丸太」だった。
女は繰り返し、母親に頭を下げた後、あやし続けていた。
母親は仕事を辞め、地元の会社に転職した。
俺が生まれた時に当時の事を強く思い出したとか。
前のページ
1/1
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 38票
実際は丸太だったとしても、それがわからない状態で子供をあやす姿を見て、バカ親だと思う異常性の方が怖い
バリキャリの自分は勝ち組だと思っているのかな。子育てしているお母さんを見て『バカ親』とか見下す女性の方が怖い💦