大学時代の友人に、やけに“ゴミ出し好き”なやつがいたんですよ。
いや、別に潔癖症とかミニマリストってわけじゃない。ただ、やたら分別ルールに詳しくて、「燃やせるかどうか」じゃなくて「残しておく意味があるかどうか」で仕分ける、みたいなとこがあって。最初は変わってるなーって思うくらいだったんです。
そいつの家、たまに遊びに行ってたんですけど、毎回ちょっとずつ部屋が変わっていく感じがして。
たとえば、前に座ったクッションがなくなってたり、本棚がごっそり空いてたり。
「あれ? あの時計どこやったの?」って聞くと、「あー、もう捨てた」って、悪びれもせず笑うんですよ。
でも、そのうち様子がおかしくなってきて。
まだ新品の調理器具とか、棚ごと無くなってる。
「もう、使う感じじゃないから」とか、意味のわからないこと言うんです。
ある時なんて、玄関に置いてあった袋の中、透けて見えたのが──
なんていうか、紙じゃない。もっと黒くて、べったりしてて。髪の毛みたいなのが絡んでて。
「これ何?」って聞いたら、「昔の声」とか言い出して。ふざけてるのかと思いました。
でも、その日、そいつの口数がずっと少なかったんです。
会話が続かない。話しかけても、途中から返事が返ってこない。
まるで、言葉を思い出せない、みたいな顔してて。
それから数週間後くらいだったかな。連絡が取れなくなって、心配になって家まで行ったんです。
鍵は開いてた。中に入ったら、何もなかったんです。
家具も家電も、生活感も、気配も、まるごと消えてた。空っぽの白い部屋。壁だけが、やけに眩しくて。
誰が住んでたんだっけ──って、ふと思った。
……あれ。
そもそも、なんでオレ、この部屋に来たんだっけな。
あいつの名前、何だったっけ……顔は、なんとなく……あれ……?
でも、ポケットに鍵が入ってたんです。
この部屋の。オレの家のじゃない。ちゃんと、住所のタグまでついてる。
笑えるだろ? 忘れてるはずなのに、鍵だけが残ってたんだ。
それからというもの、なぜか、オレも──
物を捨てるのが、ちょっと楽しくなってきて。
思い出せない写真とか、昔録った誰かの声とか、そういうのを袋に詰めては出してるんです。
最近、よく知らない人が「おかえり」と言う。






















怖!