何故ゾンビが発生するのか。その原因は未だ不明である。
ただ特徴として、老衰で死んだ老人が蘇るケースが多く、その為、必然的に老人施設での発生が多い事が挙げられた。
ゾンビの発生の対処に追われた政府は、全国各地の介護老人施設の中に隔離の為の棟を併設する事を指示した。
隔離の理由として、このゾンビ化現象が何かしらの感染症が原因ではないかとの推測もあった。
もともと介護老人施設には、認知症専門棟など、心身状態の軽重度別に棟を分ける特徴があり、ゾンビの専門棟を併設する事に然程の苦労はなかった。
そして、全国で発生したゾンビ達は、この隔離棟…通称『ゾンビ棟』へ強制的に収容される事となる。
…
政府の指示のもと、ゾンビの研究機関が公的に設けられた。
全国各地から収集された研究者の中には、ゾンビの第一発見者であった例の医師の姿もあった。
だが、その医師は、先日の誤診騒動からの度重なる訴訟問題の屈辱と重圧、そして、ゾンビの第一人者として認められた事によって、己の自尊心を醜く歪めていた。
この医師の存在が、惨劇に更なる拍車をかける事となる。
…
研究機関の調査により、このゾンビが持つ特性の幾つかが判明した。
〈報告書①〉
まず、このゾンビ化は88歳以上の高齢者だけに発生する。
なぜ88歳かは不明である。
しかし、大きな身体損傷がある死体には発生せず、特に頭部を大きく損傷している亡骸がゾンビになるケースは無かった。
次に、その行動パターンなのだが、記憶や意識があるかは明確ではないが、生前の親しい存在…家族や友人に近づこうとする傾向があった。
よって、ゾンビ化した老人の家族・友人はゾンビに近付く事を硬く禁止された。
三つ目に、ゾンビ化に至る感染方法である。
感染経路は未だ不明であり、未知のウィルスも発見されていない。しかし、着実にゾンビ化老人に数が増えている事から、ゾンビ棟への隔離は継続が徹底されている。
そして…、
社会の最大の関心ごとは、『このゾンビ共を国はどう扱うのか?』に絞られていく。
彼らは死者なのか? 生者なのか?
保護すべきか、否か?
社会は、自問する事となる。
…
ゾンビをどう扱うか?
その答えを導く言葉が、研究機関の中間報告書の一文にあった。























ストーリーがめっちゃ面白い!
エグい、リアル、本当に怖いのは人間、そして哀しい。
この人の作品毎回恐すぎる