だから、その孤独な老人が今際の際に唱えた言葉など、誰も聞いてもいなった。
「世界は変わる。ここから変わるのだ。」
それは老人が語った始めて意味のある言葉だったのかもしれない。
だが、その言葉が示す意味は誰にも解らない。
しかし、惨劇は確かに、その瞬間から始まったのだ。
…
…
そして、名も知らぬ老人の死から、数日後。
事態は動き出す。
最初の、『蘇り』が、発生した。
そう、死者が、蘇ったのだ。
…
…
老人施設の中にある特別個室のベッドの上に、1人の老人が力無く横たわっている。
その老人の命は、今まさに喪われようとしていた。
老人の周囲を家族と医師と、施設の介護士・看護師スタッフが囲っている。
そして、
「臨終です。」
そう医師が告げる。
「親父~!」
動かぬ老人の耳元で名を叫ぶ息子。シーツを握り締め悲しみに暮れる娘。
その時、この老人は、確かに死んでいた。
瞳孔反射も消失し、脳機能も失った亡骸だった。
呼吸も止まり、もう二度と意識を取り戻さ無いと思われた。
施設所属の医師の確認のもとに行われた死亡診断でも、老人は間違いなく死んでいた。
命を失った肉体。屍だった。
死んでいた、
筈だった。
だが…。
家族の悲嘆の声と、死という永遠の静寂が同居する空間。
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ストーリーがめっちゃ面白い!
エグい、リアル、本当に怖いのは人間、そして哀しい。
この人の作品毎回恐すぎる