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ヒトコワ

yukiさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

介護・オブ・ザ・リビングデッド
長編 2025/05/19 14:00 12,237view
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その空間の中、変化は起きた。

…動いたのだ。

老人が。屍体が。亡骸が。

臨終の寝床から、死体が突然、むくりと起き出したのだ。

だが、その老人の顔色は土気色と蒼白に染まる死者の顔のままだった。

その老人は、何かを探しているかのように顔を周囲に向ける。

その双眸に光は無く、意識があるとは到底思えない。

しかし、その動きは、緩慢であったが自然であり、それが老人の自立的な動きである事を示唆していた。

「う、うわーーーー!」

臨終の寝床から起き出した老人の姿に、叫び声を挙げる家族。

「な、なんだと…?」

死を看取った医師も言葉を失い、周囲の看護師介護士も驚きを隠せなかった。

「蘇生するはずが無い! 確かに、この老人は、死んだはずなんだ! 死人が動くはずがあるものか!」

混乱する医師が言い放つ。

その時、部屋の中にいた一人の男性介護士が、誰に言うでも無く呟いた。

「うわ…。まるでゾンビだよ。気持ち悪いよなぁ。」

と。

吐き気を抑えるように、

口元に手を当てながら、

まるで化け物を見るような目で、

そう呟いたのだった。

…死人が動く。…ゾンビ。

そう呟く介護士の姿と言葉は、医師の脳裏に深く焼き付いた。

…心身ともに疲れ果てていた介護士の、その一言。

それが、社会の歯車を壊すきっかけとなったのだった。

当初、この蘇り現象は、死亡を診断した医師の誤診だと思われた。

老人の家族は医師に『藪医者!』『慰謝料を寄越せ!』等の冷たい言葉の数々を放った。

5/16
コメント(3)
  • ストーリーがめっちゃ面白い!

    2025/05/19/16:40
  • エグい、リアル、本当に怖いのは人間、そして哀しい。

    2025/06/29/00:09
  • この人の作品毎回恐すぎる

    2025/08/19/15:22

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