奇々怪々 お知らせ

呪い・祟り

yukiさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

馘、括リ姫
長編 2025/05/16 14:53 16,275view
0

今から300年前のことです。
この土地は、○○藩と呼ばれていました。
○○藩の土地は、水と大地に恵まれ、近隣の藩が羨むほどに栄えていました。
その藩を納める藩主も、名君と呼ばれ民に慕われていました。
藩主には、紅姫という娘がおりました。
紅姫は美しく器量も良く、藩主と同様に民に慕われてました。
臣下の中から紅姫の許嫁も決まり、○○藩の未来は前途洋々だと、藩の誰もが思っていました。
ところが、○○藩の恵まれた環境を妬む隣国の藩主が、○○藩の土地を強引に手に入れようと画策を始めた事が、災禍の始まりでした。
○○の土地を政略的に手に入れようとした隣国の藩士は、○○の地に将軍が来訪する機会を利用し、乱心に見せかけて○○藩の藩主を自害に追い込みました。
父の死が隣国の藩主の企みであることを、内通者を通じて知った紅姫は、怒りに駆られ、信頼する臣下達に、隣国の藩主の暗殺を依頼しました。
当初は反対していた許嫁の臣下でしたが、最後には紅姫の意思に従い、多くの臣下を率いて、暗殺予定の地に向かいました。
ところが、これも隣国の藩主が○○藩に連なる臣下達を皆殺しにするために企んだ罠だったのです。
内通者の裏切りを知った紅姫は、急ぎ暗殺を決行する予定だった林に向かいました。
林に着いた紅姫を待っていたのは、凄惨な光景でした。臣下達は残らず殺され、木に吊るされていたのです。
吊るされた遺体は、鳥や獣に食い散らかされ、無残な姿でした。
許嫁の臣下の遺体は、特に酷く、まるで晒し者にされるかのように、手足を切断され、達磨のような姿で木に括られていました。
他の家臣が林に到着した時、紅姫は木々に吊るされた許嫁の前で、天を仰ぎながら高笑いをしていたそうです。
そう。この光景を見て、紅姫は狂ったと言われています。

全てを失った紅姫は、隣国の藩士への復讐を決意しました。いや、藩士だけではなく、隣国の人間全てを、国を、滅ぼそうと誓ったのです。
復讐の思いに取り憑かれた紅姫は、国中の怪しげな文献を読み漁り、邪法を組み合わせ、『国を滅ぼす呪い』を考えつきました。
呪いの力を一つの場所に集め、その力を用いて対象を呪うという方法です。
まず城の地下に、数人の人間を閉じ込めます。
食事も水も与えず、何日も放置し、極限の状態に追い込んだ後、その人間達に、殺し合いをさせます。「生き残った者のみ、外に出す」と言ってです。
極限状態に追い込まれた人間は、自害するか、望まぬ殺し合いを行います。知人を殴り倒し、隣人の首を絞め、勝ち残った人間の姿は、もう人のものではありません。
勝ち残った人間も、最後には殺されます。
死体は全て、首を括られ地下の天井の梁に吊るされました。
これが呪いを溜め込む手順です。
この手順を何度も繰り返します。
国の人間が殺し合う姿を見ながら、括られる姿を見ながら、紅姫は笑っていたそうです。姫の手元には、一体の人形が抱えられており、その人形に向かって、我が子のように語りかける姿もあったそうです。「もうすぐだからね」と。
途中、姫の奇行に異議を言う者もいましたが、その者も、殺され、吊るされました。
地下室の壁には、殺された者の怨嗟の言葉や血に汚れた手形が一面に残っていたそうです。
幾人もの人間が、姫の支持で殺し殺され、括られました。何人も何人も…。死至る命令をする姫の姿は、まるで、人を括る事に魅入られたようでした。
こうして、呪いの力を溜め込んだ部屋が完成します。その部屋で、隣国を呪う儀式を行う事で、『国を滅ぼす呪い』が完了するのです。
ですが、儀式を行う直前、姫は死にました。地下室で、首を括って死んでいたそうです。それが自殺だったのか、殺されたのかは、わかりません。
一説には、自らの死を持って呪いが成就されたのではないかという説もあります。
が、真相は誰にもわかりません。姫の亡骸の傍には、例の人形が転がっていたそうです。

地下室は、姫の死とともに封印されました。新たな藩主を迎え入れた後も、その部屋は開かずの間とされ、誰も足を踏み入れることはありませんでした。
その後、老朽化した城が取り壊される際、その部屋に込められた呪詛が解き放たれないように、例の丘の森の祠に封印を移し替えかえました。以降、我ら『護所』の者たちが、封印を守り続けていたのです。
ですが…。
と、坊さんの話が終わるのと同時に、管理人小屋の扉が勢いよく開いた。
そこには先ほどの作業着の管理人がおり、息を荒立てていた。
どうしたのだろうか。
管理人は、坊さんの所に駆け寄ると、
「大変です! Aさんの親御さんが、『護所』からAさんを無理やり連れ去ってしまいました!」
「なんだって!」
坊さんは、管理人小屋の電話に駆け寄ると、慌てた様子で受話器をとり、何処かへ電話をかける。
電話口で「なんで許したんですか!」「無理矢理?」「人形は?」「自宅ですね。わかりました。」そんなやりとりをした後、受話器を置く。
坊さんは、電話が終わると、俺たちに、
「私は用事ができました。君たちは、もう帰りなさい。」
と言い、急ぎ足で小屋の出口に向かう。
出て行く直前に、坊さんは俺たちに紙切れを渡し、
「何かあったら、ここに連絡を下さい」
と言って、足早に小屋から出て行った。
残された俺たちも、Bの車で帰路に着く。

10/16
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。