奇々怪々 お知らせ

心霊

有野優樹さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

道案内
短編 2025/05/12 18:19 2,305view
1

 飲み会を楽しみながら横目で時間を確認していたのだが、ギリギリまで居続けてしまった結果、終電を逃してしまった。あけみさんは始発の時間まで近くのホテルやネカフェで過ごすことも考えたが、大学生ゆえ財布が寂しい。

 就活で忙しかったのだが、進路も決まり落ち着き始めていた頃の飲み会だったので時間を忘れてしまったのだ。歩くいて帰ると2時間近くかかるが、お酒で熱った体を覚ますのに秋風がちょうどよいと思い歩いて帰ることに。

 1時間くらい経った頃、閑静の住宅街を歩いていた。馴染みのない暗い道は、少し心細い。酔いも冷めはじめてくる。

 淡く白い光を放つ街頭が等間隔に存在するコンクリートの道。数メートル向こう、正面から30代くらい見える女性が歩いてくることに気づいた。

 自分と同じく終電を逃した人だろうか。人のことを気にしている場合ではないが、終電と始発の間であるこの深い時間帯にひとりで歩いているのは心配だ。

 そんなことを考えていたら、だんだんとすれ違う距離まで迫っていた。

 すれ違った数秒後、後ろから

 「あのぉ」

 と声をかけられる。

 振り返ると今すれ違ったばっかりの女性から

 「あの、〇〇へ行くには‥」

 と道を尋ねられた。
 こう行ってああ行ってと答えると

 「ありがとうございます」

 と御礼を言うと再び歩き始めた。
 たまたますれ違った自分に聞くよりも携帯で調べたほうが正確なのに、と違和感を覚えたがあけみさんもまた歩き始める。

 するとまた

 「あのぉ」

 と少し距離がひらいたからなのか今度は少し張り気味に声をかけられる。

 振り返ると先ほどの女性がまた

 「〇〇へ行くには」

 と言い始めたので、同じ答えを返そうとしていたそのとき「あ」と、一瞬固まってしまった。

 女性は真正面にこちらを向いており、目がばっちりとあっている。

 しかし、その上半身に見えるのは背中。

 頭だけが後ろを向いており、体は前を向いたままなのだ。

 「〇〇へ行くには」の「〇〇へ‥」あたりでその言葉を遮るようにあけみさんは走り出す。少しでも音があり人が見える場所に行きたかった。夜中とはいえ、大通りに出れば少しは人や車が見える。

 近くの大通りに出たとき、たまたま通りがかったタクシーを捕まえた。歩いて30分ほどの距離まで来ていたが、できる限り帰宅を早めたかったのだ。

 自宅のマンション前に着く。階段で3階の自分の部屋まで行き、鍵を開けて扉を閉める。やっと一息つけると思ったのも束の間。

1/2
コメント(1)
  • 道と家って違いませんか?

    2025/05/15/22:17

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。