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妖怪・風習・伝奇

君尋さんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

鳥居をくぐる
長編 2025/05/10 06:06 5,676view
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家に帰ると、まず母に怒られました。
「あんたたち!こんな時間までどこ行ってたの!?」
ごめんなさいと、全員半べそで謝りながら、チラリと玄関の上り口に目を向けます。

置いてあるランドセルは、3つ。

「全く、〇〇ちゃん(怖がりの子です)はとっくに帰ったわよ!?裏山ではぐれちゃった、なんて泣きながら言ってたから…!!」

心配してくれていたんでしょう。母は泣きそうになりながら「良かった、何にもなくて良かった」と繰り返し言っていました。
どうやら、私達を探すために各家の親が集まっている最中だったそうです。
2人は迎えにきたご両親にそれぞれコッテリ叱られていました。もちろん、私も正座でお説教でした。

その日、寝ていた私は変な音で目が覚めました。
コツリ、コツリと窓に何かがぶつかるような音。

山に近い家ですから、カナブンやカメムシがぶつかるのはよくある事です。
それらの音より少し重たい気もしたんですけど、見に行くほどのものではないと、そのまま眠ってしまいました。

次の日、学校に行くと、怖がりの子が来ていません。
昨日のメンバーは全員同じクラスでしたが、その子だけいなかったんです。
「昨日の事がショックで、体調崩してるのかも」
「先生に後で聞いてみよう」
そんな話をしていたんですが、出欠の点呼で、その子の名前が呼ばれませんでした。

あれ?と思って、朝の会が終わった後、先生に聞くと。

「…〇〇ちゃん?えっと、ごめんね?誰のこと?」

なんて返事したかは、覚えてません。

気付いたら放課後になっていて、私は急いで家に帰りました。
帰って母に「ねえ!昨日〇〇ちゃん、私たちより早く帰ってきてたんだよね!?」と聞くと。

「どうしたのいきなり、〇〇ちゃんって誰よ?」

母は、何言ってるんだこの子は、みたいな顔してそう言ったんです。

次の日、学校で友達にその話をしました。
すると、男の子が「〇〇って誰?一昨日は俺たち3人だけだったろ?」とキョトンとした顔で、こう答えたんです。

もう1人の子は、それから暫くして「ねえ、〇〇って子知ってる?その子のノートが家にあったんだけど、誰か分からなくて」と、やはり彼女を忘れてしまいました。

結局、彼女を覚えているのは私だけになりました。
その子の家に行ったりもしたんですけど、前は全員分の名前が書いてあった表札から彼女の名前が消えていて、怖くなって逃げるように離れました。

今では、私も名前を思い出す事が出来ません。
見た目や性格、遊んだ記憶なんかは妙にハッキリ覚えているんですが、名前だけはどうしても思い出せないんです。

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