私が小学生の頃、学校で流行っていた怖い話があります。
「裏山の少し道を外れた獣道に古びた鳥居がある。その鳥居をくぐらずに進んでしまうと、変なものに追いかけられる」
そんな話です。
鳥居自体は実際にあって、地域に長く住んでる人に聞けば由来もすぐに分かるくらい有名なものでした。
なんでも、昔あったお寺だか神社だかの名残で、建物は地滑りが起きた時に無くなってしまったけれど、鳥居だけは残っているのだとか。
「だから、あの辺りには近づいちゃいけないよ。地面が緩くなってて危ないからね」
私も、そんな話を家族から聞きました。
ただ、当時は小学校生でしたから、好奇心に負けてその鳥居まで遊びに行った事があるんです。私と友達、合計4人で行きました。
小学校は山を切り崩してできた住宅街の側にあって、私はその住宅街に住んでいたので、私の家に荷物を置いて、放課後に鳥居を探しに裏山へ。
子供の足で10分くらい歩くと道が不自然に曲がっているので、それを無視して真っ直ぐ行くと、例の鳥居に到着します。
「…本当にあった」
「なんか怖いね…」
「そうかぁ?ただの鳥居じゃん」
友達の反応は様々でしたが、みんなワクワクを隠せていない顔をしていて、誰に言われるでもなく自然と鳥居をくぐりました。
今になって思い返すと、まるで誘われてるみたいでした。誘蛾灯に虫が群がるみたいに、自然と足が鳥居の方に吸い込まれていったんです。
鳥居をくぐった瞬間です。
今まで聞こえていた虫や鳥の鳴き声が、ピタリと止みました。
夏の暑い日でしたから、蝉だって五月蝿いくらいに鳴いていたのに、それがピタッと止んだんです。
全員驚いて顔を見合わせました。
友達の中で1番怖がりだった子が、泣きそうな顔になって「なんか変だよ、帰ろうよ」と言いましたが、暑い中わざわざコレを目当てに山を登ったのです。
私含めた残りの3人は「いや、ここまで来たし、進んでみよう」と先に進む事にしました。
鳥居の先は少し地面が斜めになっていて、私達は慎重に歩き出しました。
怖がりの子も、1人で帰る勇気がなかったのか、渋々といった感じで着いてきます。
暫く進むと、更に傾斜が厳しくなっているのが見えました。
「これ以上は無理っぽい」
「なんだぁ、つまんないの」
「日も暮れてきたし、帰ろうか」
私達が振り向くと、1番後ろに着いてきていた怖がりの子が、背後の鳥居を凝視しているのに気付きました。
「何見てるの?」
気になって、全員で鳥居の方に目を向けると。
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