ノートの全てのページに、その文字がびっしりと書き込まれている。
誰が書いたのだろうか?
私に書いた記憶はない。
だが、その文字は、確かに私の筆跡だった。
突然。
私は席から立ち上がった。
私の意思とは無関係に。
まるで、私の背後に這い寄る何者かの手に引き摺り起こされるかのように、無理矢理に立たされた。
その姿無き這い寄る誰かが私の口をこじ開ける。
喉の喉笛に、声帯に、その冷たい指が絡まり、私の意思に反して、声を絞り出させる。
私の脳裏に、次に私が口から発するべき言葉が思い浮かぶ。
あの言葉。忌むべき言葉。
嫌だ。言いたくない。私はその何者かの意思に抗う。
だが、それは無駄な抵抗だった。
私の口から、あの忌むべき言葉が絞り出された。
「ないあるらとほてふ」
私がそう叫んだ直後。
今までクラスの中にあった喧騒が、体動が、消えた。
映像を一時停止したかのように。
クラスの中の全ての動きと言葉と音が消えた。
室内を混沌が支配する。
その数秒後。
クラスの誰かが、叫び出す。
「ないあるらとほてふ」
その声に続くように、他の誰かが声を上げる。
「ないあるらとほてふ」
私の右側からも、声がする。
「ないあるらとほてふ」
私の後ろからも、声がする。
「ないあるらとほてふ」
私を囲むクラスの全ての人間から、声がする。
ないあるらとほてふ ないあるらとほてふ ないあるらとほてふ ないあるらとほてふ ないあるらとほてふ ないあるらとほてふ ないあるらとほてふ ないあるらとほてふ ないあるらとほてふ ないあるらとほてふ ないあるらとほてふ ないあるらとほてふ ないあるらとほてふ ないあるらとほてふ ないあるらとほてふ…。























現代日本版クトゥルフ神話ですね
考えて見ると怖い話とクトゥルフは非常に親和性が高いのでアレンジすると面白くなりそうです