次の日だ。
私の心に、一つの疑問が生じた。
彼は誰だっけ?
彼の名前は何だっけ?
何故か、私はそのクラスメイトの名前が思い出せなかった。
思い出そうと頭の中を整理するが、まるで頭の中に霧がかかったようになり、思考が鈍る。私の中の彼に関する記憶が、顔が、姿が、印象が、イメージが、黒く濁ったペンキをぶち撒けられたかのように消えていく。
そのうちに、私がどうして彼の事を思い出そうとしているのか、それすらも記憶の糸が鋏でブツリと断ち切られるように消失する。
そして、私は、ふと気付く。
彼が誰であろうと、どうでもいい。
だから彼がどうなろうと、私には関係ない。
私の思考は、そう結論づけた。
その数日後。
その彼は、死んだ。
彼の死を聞いても、クラスの誰もそれを気にしている素振りは無かった。
私の心に、チクリとした違和感が生まれる。
だが、すぐにその違和感は、消えさった。
それからまた数日後。
休憩中。
クラスメイトの一人が、突然立ち上がり、叫びだした。
「ないあるらとほてふ」
そのクラスメイトは、何度も何度も、その言葉を叫んでいた。
…あぁ、あの文字は、そう読むのか。そんな事を私は無意識に思う。
「ないあるらとほてふ」そう叫び続けるクラスメイトを気にする人間は、誰もいない。
…あれは、誰だっけ?
…ま、どうでもいいか。
翌日。
そのクラスメイトは学校に来なかった。
死んだのだろうか。
それを気にする人間は、私の周りに誰もいない。
次の日。
登校した私は、席についた。
そして、授業の為にノートを取り出す。
だが、ノートを開いた瞬間。
私は息を飲んだ。
【薙畏悪罹羅倒葬手腐】
その文字がノートに書き込まれていた。
私の手がノートのページをめくる。
【薙畏悪罹羅倒葬手腐】
次のページにも、その文字が刻まれている。
私の手は再びページを捲る。
【薙畏悪罹羅倒葬手腐】
【薙畏悪罹羅倒葬手腐】
【薙畏悪罹羅倒葬手腐】
いくらノートを捲っても、その文字は続く。
薙畏悪罹羅倒葬手腐薙畏悪罹羅倒葬手腐薙畏悪罹羅倒葬手腐薙畏悪罹羅倒葬手腐薙畏悪罹羅倒葬手腐薙畏悪罹羅倒葬手腐薙畏悪罹羅倒葬手腐薙畏悪罹羅倒葬手腐薙畏悪罹羅倒葬手腐薙畏悪罹羅倒葬手腐薙畏悪罹羅倒葬手腐薙畏悪罹羅倒葬手腐薙畏悪罹羅倒葬手腐薙畏悪罹羅倒葬手腐薙畏悪罹羅倒葬手腐薙畏悪罹羅倒葬手腐薙畏悪罹羅倒葬手腐薙畏悪罹羅倒葬手腐薙畏悪罹羅倒葬手腐薙畏悪罹羅倒葬手腐薙畏悪罹羅倒葬手腐薙畏悪罹羅倒葬手腐薙畏悪罹羅倒葬手腐薙畏悪罹羅倒葬手腐
























現代日本版クトゥルフ神話ですね
考えて見ると怖い話とクトゥルフは非常に親和性が高いのでアレンジすると面白くなりそうです