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呪い・祟り

Mineさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

赤い手の家で
長編 2025/04/29 10:44 5,708view
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言い出したのはどっちだったか、今となっては考えるだけ時間の無駄ってやつだがとにかく廃屋探検に行こうぜ、ということになって休みの日に俺と悪友のカズキの二人でその廃屋に出向く事になったんだ。
町外れにあるその廃屋はかつて一家心中があったとか強盗殺人があったとか、あるいは単なる夜逃げとか、そういういかにも信憑性の怪しい事を口さがない人達が言ってるが実際の所は誰も知らない、そんな場所だった。まぁ廃墟なんてどこも似たような物だと思うけどな。

その家は俺の地元では「赤い手の家」と大抵の人は呼んでいた。
由来はその家の2階には赤い手形がたくさん付いてる部屋があるから、らしい。
その部屋で女の霊が出るとか入ると呪われるとか色々言われているけどこれもまた出所不明の噂で、俺の身近に実際その赤い手形のある部屋を見たという人はいなかった。

お互い霊感なんて1ミリもないけどそこでならついに幽霊が見れるかもな。
そんな十代特有の軽いノリで暇と好奇心を持て余した俺とカズキは、単調な毎日に刺激を求めるべくその廃屋へと赴いた。
安易に心霊スポットなんかに行くとどうなるか、高過ぎる勉強代をその日の内に払うハメになるとは露知らず。

木々に埋もれる様に山際にぽつんと建つ赤い手の家は洋風の2階建で遠目からでもすぐそれと分かるほど異様な雰囲気を放っていた。
まず俺たちを出迎えたのは雑草が伸び放題の荒れ果てた前庭だった。敷地は想像よりはこぢんまりとしていて、申し訳程度に立ち入り禁止を示すロープが張ってあったがまるで用を成してない。

俺らの他にも探索しにくる奴がやはりそれなりにいたらしく玄関までの草は踏み慣らされてちょっとした道になっていた。
元は綺麗な純白であっただろう外壁は長年管理者不在の状態で風雨に晒され汚く黒ずんでひび割れも目立ち今では見る影もない。窓のガラスは殆ど割れてしまっている。

いよいよ中へ入り懐中電灯片手にまずは1階の探索から始めた。
床を埋め尽くしている雑多なゴミやカビまみれのソファー、穴だらけの壁、スプレーの落書き・・・日本全国どこにでもあるような普通の廃屋の光景だが、当時の住人の生活が偲ばれる家具や小物類は中々趣があっていいものだ。風呂場には何故かマネキンが捨てられていて流石にそれにはビビったけど。
1階を30分近く見て回った後、本命の2階へと上がっていく。

2階には部屋が2つあってまず手前側の部屋を覗いてみるが何もないがらんとした部屋だ。元は書斎だったのだろうか、床には書籍の残骸が散乱していた。
ということは残った奥の部屋、噂が本当ならその部屋に赤い手形があるはずだが・・・。
戦々恐々としながら意を決しドアを開ける。
「うおっ・・・」
俺たち二人は思わずそんな声を漏らしてしまった。

壁と言わず床と言わず、夥しい数の赤い手形が部屋中を覆い尽くしていたのだ。

正直俺は噂はガセネタか、もしくはせいぜい壁の片隅にいくつかの手形らしき物があるくらいだろうと高をくくっていたけど、これには面食らった。大きさからすれば子供か女性の手か。ここは明らかに他と空気感が違う。

汗ばむほどの気温だったが部屋に入った途端に一気に氷点下まで下がったような、そんな寒気さえしてたった二人だけで安易に訪れたことに今更ながら後悔の念が湧き上がる。
部屋にある家具はスプリングが飛び出している朽ち果てたベッドと倒れてるサイドテーブル位だ。一体過去に何があってこの家は廃屋になったのか。想像を巡らさずにはいられない。

立ちくらみを起こしそうなほどの禍々しさに圧倒されながらも、他の奴らにも見せて話のネタにしようと俺は部屋の写真を取り始めた。
夢中で何枚か取っていると、さっきからカズキが部屋の中央に陣取り、床や壁の手形を難しい顔でじっと観察している。

「どうした、何してんだよ」

「いや・・・お前さ、この手形見てなんも気付かねーの?」

そう言われてしばらく手形を眺めてみるがピンとこない。するとカズキが壁にある手形の一つに自身の左手を重ね合わせた。

「ほら、な。ここにある手形、全部左手しかないんだよ」

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コメント(1)
  • こわ

    2025/09/03/14:40

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