…
新幹線の中で。
俺は缶ビールを飲みながら、ボンヤリと時速270kmで流れる夜景に目を向けていた。
…さっきのあれは、なんだったんだろう。
なるべく考えないようにしていたのだが、流石に二時間近く新幹線の席に座っていれば、嫌でも先程の事が思い浮かんでしまう。
ゴウッ!
新幹線がトンネルに入った。
視界の先の夜景がトンネルの黒い壁に変わる。
その時、俺は気付いた。
俺の座る席の窓の右下に。
黒い手形があった。
…誰かのイタズラだろうか…。
俺は、数瞬の間、気無しに、その手形を見つめてた。
ぬるり。
手形が、動いた。
窓の中央に向かって、だ。
…手形じゃない!
俺の視線の先で、ゆっくりと、だが確実に、
虫が這うような速度で、
手形が、
いや、
誰かの、…ナニカの手が、
窓の中央に向かって、
…俺に向かって、
這ってくる!
めいいっぱいに指と指の間を広げた手形は、まるでヤモリのように新幹線の窓にへばり付いているようであった。
「う、うわ!!」
我に返った俺は、短い叫び声を上げながら、イスから滑り落ちて尻もちをつく。
尾骶骨を打つ衝撃が俺を貫くが、痛みを感じる余裕は無かった。
周囲の乗客が、何事かと床に座る俺に好奇の視線を送る。
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勘違いだったらすいません。 「気のせいか。」が「木にせいか。」になってます。
「直しましたm(_ _)m」